石笛・岩笛とは?縄文時代の神おろしに使われた日本最古の笛について解説!

石笛・岩笛とは?縄文時代の神おろしに使われた日本最古の笛について解説!

石笛・岩笛という楽器をご存知ですか?自然石(じねんせき)に雫やニオ貝によってできた穴に息を吹きかけて奏でる笛です。石笛・岩笛は遠く縄文時代から伝わる日本の笛で、古代では神様との交流などの神事にも使われていました。石笛・岩笛の起源と成り立ちを詳しく解説します。

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  1. 1石笛・岩笛とは
  2. 1.1石笛・岩笛の起源は縄文時代まで遡る
  3. 2石笛・岩笛と神おろし
  4. 3神秘的な石笛・岩笛の音色について

石笛あるいは岩笛とは日本最古の笛の一つです。「磐笛」と表記されることもあります。
その音色はとても神秘的で、大本教(神道系の新宗教)の教祖出口王仁三郎(でくちおにさぶろう)は、「磐笛は”幽”(ゆう)、”幽”と音色を発しせしむ。」と表現し、三島由紀夫は著書の「英霊の聲」(河出文庫刊)中で以下のように書き記しています。
 

岩笛の音は聞いたことのない人にはわかるまいが、心魂をゆるがすような神々しい響きを持っている。清澄そのものかと思うとその底に玉のような温かい不透明な澱みがある。肺腑を貫くようであって、同時に、春風駘蕩たる風情に充ちている。又ある日は、千丈の井戸の奥底にきらめく清水に向かって、声を発して戻ってきた谺をきくような心地がする。


このように宗教者や文学者の心を揺らす日本の笛として最古のものとなる石笛・岩笛とはどのような楽器なのでしょうか。その日本最古といえる歴史や起源、特徴を詳しく解説します。

石笛・岩笛とは

4つの石笛

石笛・岩笛とは

石笛岩笛は日本の笛としては最古の楽器の一つであることは間違いありませんが、もともとは音楽を楽しむために人工的に作られた器物ではありませんでした。石笛・岩笛の起源は、自然の力によって穴の開いた石を笛として使用していたとされています。そのため、石笛・岩笛は別名「天然笛」とも称します。
天然笛の存在は日本固有のものではなく、世界各地の古代文明でも存在を確認されています。石と木で素材は違いますが、例にあげると、オーストラリアの先住民アボリジニに伝わるディジュリドゥもその一つです。白蟻によって空洞にされたユーカリの木を笛として吹き鳴らしていました。

石笛・岩笛の起源は縄文時代まで遡る

 蜆塚遺跡の竪穴式住居

石笛・岩笛の起源は縄文時代まで遡る

石笛・岩笛は日本最古の笛の一つであり、その起源はおよそ5千年前と言われています。その頃の日本は狩猟採集を行っていた縄文時代の中期でした。
縄文時代は約1万2千年前に発生した文明で、自然が豊かな日本列島ではおよそ1万年間続きました。
縄文時代の信仰の考え方は、自然の恵みに生かされているという実感から、自然信仰(アニミズム)であったと考えられています。自然信仰とはいわゆる西洋的な絶対神が存在する一神教とは違い、自然の中にある全てのものに神が宿っているという考え方です。この縄文時代の自然信仰がやがて八百万の神様が存在する神道の考え方につながっていきます。
自然への敬虔(けいけん)な気持ちを持つ縄文人が天然石にあいた穴から息を吹き込むことにより音色を奏でる石笛・岩笛に神秘的な信仰心を抱いたことがその起源ではないかと推察できます。

石笛・岩笛と神おろし

モノトーン画像の石笛

石笛・岩笛と神おろし

石笛・岩笛はもう一つの名称として「神おろしの笛」とも呼ばれています。神おろしとはすなわち、自らの体に神霊を乗り移らせることを意味しています。
しかし、日本に伝わる古代の神様は荒ぶる神様で、神おろしのためには神様を鎮める、すなわち鎮魂の儀式が必要になります。
石笛・岩笛の神秘的な音色は魂の宿った音である「音霊(おとだま)」をつかさどり、荒ぶる神霊への鎮魂の音色であったのです。
石笛・岩笛の音色は鎮魂の儀式から神おろしへの合図として奏でられていました。
現代の石笛・岩笛演奏の第一人者である横澤和也さんのホームページに、非常に印象的な記述がありました。要約すると、初めて石笛・岩笛に触れた横澤さんは立ち会っていた宮司に「石笛は神を呼ぶので練習してはいけない。」と言われたそうです。
神おろしのための鎮魂の音色は、練習からではなく吹く者の魂から生じるということでしょうか。
そして同じホームページには「フルートなどの楽器は人間が吹きやすいように作られているが、石笛はその形に人間の唇を合わせなければならない」とも記述されていて、これは自然の形に人間のほうから近づいていくということを意味しているのでしょう。まさに、自然崇拝の中から生まれた日本の笛という印象です。
 

神秘的な石笛・岩笛の音色について

海岸の朝焼け

神秘的な石笛・岩笛の音色について

石笛・岩笛とは、二枚貝のニオ貝が海中の岩に穴を空けた、その後自然に砕かれた岩が礫(つぶて)となった際に、穴に息が通ると音が鳴った、自然の中で偶然作られた笛です。
石笛・岩笛は偶然の産物でできた笛でありながら、その音域は1オクターブを超えて広がります。また、音色や音程はその石により様々ですが、どの石笛・岩笛も硬く尖った高音が奏でられます。石笛・岩笛の高音域は2万2千ヘルツを超えることが実験で確認されていて、人間は高周波を含む音を多く聞いた時により多くのアルファ波が出るという実験結果も存在しています。
石笛・岩笛の硬く高い音色には人間の精神をリラックスさせ、気持ちを開放する効果があるといえます。

石笛・岩笛

  • 石笛・岩笛は自然石に穿かれた穴に息を吹きかけて奏でる楽器で、自然笛とも言われています。
  • 起源は縄文時代までさかのぼり、神おろしなどの神事に使われていました。
  • 音色は硬く高温で2万2千ヘルツを超える高周波を含み、人間の脳からアルファ波を引き出す効果があります。

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