作者不明の「龍神祝詞」とは?
龍神祝詞は龍神様に宛てて唱える祝詞で、「神道大祓全集」という書物の中に神職が毎日唱える大祓詞・祓詞とともに載っています。
龍神祝詞の原文
龍神祝詞【原文】は下記の通りです。
高天原に坐し坐して(たかまがはらにましまして)
天と地に御働きを現し給う龍王は(てんとちにみはたらきをあらわしたまうりゅうおうは)
大宇宙根元の(だいうちゅうこんげんの)
御祖の御使いにして(みおやのみつかいにして)
一切を産み一切を育て(いっさいをうみいっさいをそだて)
萬物を御支配あらせ給う(よろずのものをごしはいあらせたまう)
王神なれば(おうじんなれば)
一二三四五六七八九十の(ひふみよいむなやことの)
十種の御寶を(とくさのみたからを)
己がすがたと変じ給いて(おのがすがたとへんじたまいて)
自在自由に(じざいじゆうに)
天界地界人界を治め給う(てんかいちかいじんかいをおさめたまう)
龍王神なるを(りゅうおうじんなるを)
尊み敬いて(とうとみうやまいて)
眞の六根一筋に(まことのむねひとすじに)
御仕え申すことの由を(みつかえもうすことのよしを)
受け引き給いて(うけひきたまいて)
愚かなる心の数々を(おろかなるこころのかずかずを)
戒め給いて(いましめたまいて)
一切衆生の罪穢れの衣を(いっさいしゅうじょうのつみけがれのころもを)
脱ぎさらしめ給いて(ぬぎさらしめたまいて)
萬物の病災をも(よろずのもののやまいわざわいをも)
立所に祓い清め給い(たちどころにはらいきよめたまい)
萬世界も御親のもとに治めしせめ給へと(よろずせかいもみおやのもとにおさめしせめたまへと)
祈願奉ることの由をきこしめして(こいねがいたてまつることのよしをきこしめして)
六根の内に念じ申す(むねのうちにねんじもおす)
大願を成就なさしめ給へと(だいがんをじょうじゅなさしめたまへと)
恐み恐み白す(かしこみかしこみもおす)
龍神祝詞の現代語訳
龍神祝詞【現代語訳】は下記の通りです。
アマテラスオオミカミたちが住んでおられる高天原には龍神様もおられます。天地に働きをかける龍神様は大宇宙根元のお使いであらせられ、大宇宙のあらゆるものを支配し、一切を手掛ける王のような神でございます。
十種の御寶(アマテラスオオミカミの孫であるニニギノミコトが天降りの際、主に授けられたもの)に姿を変え、神羅万象を自由自在に操って治められている龍神様に真心で六根(人間の五感に第六感とも呼べる意識の根本を加えたもの)一途にお仕えいたします。
浅短なる人々の心に注意を与えていただき、生命あるすべてのものの罪や穢れの衣を脱がしていただきますよう、また、宇宙のあらゆるものの病や災いをも清め、神羅万象をお治めくださいますようお願い差し上げます。なお、龍神様にお願いを差し上げる理由をここに申し上げます。私が六根で思う大きな願いを成就させていただきますよう、恐れ多いのですがこの通り申し上げます。
龍神祝詞の意味
龍神祝詞の意味を文節ごとにご紹介します。
冒頭は、「龍神様が天地の世界創造においてどれだけ重要な存在であらせられるか」が記されています。中盤には、「龍神様が十種の御寶に姿を変えて神羅万象を自由自在に操って治められていることを心から尊敬している」旨があり、終盤は「私を含め、愚なる人々の心が改められるよう龍神様にお導きいただきたい」、さらには「恐れ多いですが私の願いをも龍神祝詞の大成できますよう聞き届けていただきますように」という意味の言葉で締めくくります。
祝詞は「奏上体」と「宣命体」の文書体で成り立っており、起源は平安時代です。そのため現代人には理解しづらい文面も多く見られます。奏上体は祝詞のことで、宣命体は神に対して直接申し上げる際に用いる文書体で、天皇の命令を漢字のみの和文体で記したものです。神主に神様へ申し上げたいことを伝えると、神主は宣命体の語を用いて、代理として神に申し上げてくださいます。
龍神祝詞の由来・起源は?
龍神祝詞の由来は、龍神様に繋がろうという人々の気持ちにあります。農耕民族であった日本人は、雨の天気を好んできました。そこで雨風を司る龍神様を崇拝し、このような祝詞ができたのではないかと考えられています。起源は、正式な祝詞ではないことから詳しくは分かっていません。 しかし、龍神様を祀る神社(主に竹生島神社などで)ではこの祝詞が奏上されているため、祈りに対しての効果はあります。
龍神祝詞を奏上した者は八大龍王から力を与えられる
龍神祝詞を奏上することで八大龍王から力を与えられるともいわれます。
この章では、その八大龍王がどのような存在なのかご紹介します。
八大龍王とは
八大龍王とは、古代インドの鬼神・戦闘神・音楽神・動物神などが御法善神になったものです。
一神ずつ決まった順番と名前、簡単な特徴や役割をご紹介します。
- 難陀(ナンダ)…千手観音菩薩の眷属である。
- 跋難陀(ウパナンダ)…難陀の弟で、兄と共にマガダ国を保護した。仏陀滅亡後に仏法を保護するようになった。
- 娑迦羅(サーガラ)…大海・大海龍王・龍宮の王である。空海が名付けた清瀧権現は、この龍王と同一龍王である。
- 和修吉(ヴァースキ)…九頭龍王と同一龍王である。
- 徳叉伽(タクシャカ)…視毒・多舌とも呼ばれ、怒って凝視されると息絶えるとされる。七面天女の母である。
- 阿那婆達多(アナヴァタプタ)…清涼・無熱悩とも呼ばれ、菩薩の化身として尊崇せられた。
- 摩那斯(マナスヴィン)…大身・大力とも呼ばれ、阿修羅が喜見城に海水を持ち込んだ際に、踊って海水を押し戻したとされる。
- 優鉢羅(ウッパラカ)…黛色蓮華池・青蓮華・青蓮華龍王とも呼ばれ、青蓮華を生ずる池に住まうとされる。
龍神祝詞を唱えて得られるご利益は?
龍神祝詞を唱えて得られるご利益について、2つ(災難を振り払ってくれる・願い事を叶えてくれる)ご紹介します。
災難を振り払ってくれる
龍神祝詞を唱えて得られるご利益の一つに、災難を振り祓ってくれることがあります。罪や穢れのある身では龍神様からの御加護を十分に受け取ることができません。龍神様を含めた神仏に叶えたいことを伝える際には、先ず自分の身やその周りを整えることが大切です。
願い事を叶えてくれる
龍神祝詞を唱えて得られるご利益の一つに、願い事を叶えてくれることがあります。自分の身とその周囲の穢れが取れた後、龍神様が願いごとを叶えてくれやすい状態になります。しかし、他力本願にならず謙虚に精進することを忘れずにいましょう。
龍神祝詞の唱え方
龍神祝詞の唱え方には規則がありません。ここでは主流とされる唱え方の方法をご紹介します。
【祝詞を唱える順番】
- 手水舎で手や口を洗い清める。
- 御神殿の前まで進み、二拝する。
- 祝詞を奏上し、願いを申し伝える。
- 二拝二拍手一礼し、参拝終了。
龍神祝詞を唱えて龍神の加護を受けよう
龍神祝詞を唱えて効果をつかみ取るには龍神祝詞に込められた意味をしっかりと理解することと、罪や穢れを祓う必要があります。龍神様について理解していることを示し、祈願する前には祝詞を通して自分の身やその周辺の罪・穢れを祓ってくださいますようにとお祈りしましょう。
龍神祝詞の意味や由来、唱え方、ご利益のまとめ
- 龍神祝詞は龍神様が祀られている神社や八大龍王・九頭龍王を参拝した際に唱えると良いとされる祝詞である。
- 龍神祝詞の由来は龍神様に繋がろうという人々の気持ちにある。
- 龍神祝詞奏上には言霊が宿っており、その言霊を意識して、丁寧に奏上する。
- 龍神祝詞を唱えることで、龍神様が願いごとを叶えてくれやすい状態になる。