奥の細道とは
奥の細道は江戸時代に活躍した俳人である松尾芭蕉が残した紀行文の代表的なもので、旅の様子を文章と道中残した俳句とで語っているのが特徴です。中学や高校などの国語の教科書でも古典の教材として掲載されており、特に中学の教科書では「おくのほそ道」と説明されています。
内容自体は、作者である松尾芭蕉が1689年に弟子の曾良を伴って江戸を出発し、東北と北陸をめぐって1691年に美濃(岐阜県)の大垣に至るまでの行程が綴られています。途中で松島や平泉、立石寺などの名所に立ち寄って読んだ俳句はとても有名です。
奥の細道の原文と現代語訳【冒頭】
奥の細道といえば、作者が旅立ちに際して記した始まりの部分が非常に有名です。原文では「月日は百代(読み方:はくたい)の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。舟の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへて老いを迎ふる者は、日々旅人にして、旅を栖(読み方:すみか)とす。古人も多く旅に死せるあり。」という書き方になっています。
現代語訳(口語訳)
奥の細道の有名な始まりの部分ですが、現代語訳すると次のようになります。「月日とは永遠にとどまることのない旅人のようなもので、来ては去り、去ってはまたやってくるような新しい年も旅人のようなものである。船の上で生涯を過ごす船頭や、馬の口をとらえて老年を迎える馬引きは、毎日旅人をしており、旅の中で住んでいるようなものだ。昔を生きた人も多くが旅の中で亡くなっている。」
このように芭蕉は旅立ちに際して、月日と旅を掛け合わせてこれからの旅に対する思いを語っています。
奥の細道の冒頭部分を解説
奥の細道の冒頭部分については、品詞を分解したり対句の部分に注目すると、その意味をより理解しやすいです。ここでは奥の細道の冒頭に込められた意味をより詳しく見ていきます。
冒頭部分の品詞分解
奥の細道の冒頭部分を一文ずつ品詞分解していきますと、最初の文が有名な「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり。」です。この文で見られる名詞以外は、助動詞や係助詞などになっています。助動詞は途中の「に」と文末の「なり」だけで、どちらも断定の助動詞「なり」が由来です。なお「に」は「なり」の連用形といえます。ほかにも「行きかふ」はハ行の四段活用「行きかふ」の連体形のほか、「は」と「も」が係助詞、「の」が格助詞、「にして」が接続助詞です。
次の文「舟の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへて老いを迎ふる者は、日々旅人にして、旅を栖とす。」は名詞以外を見ていくと、動詞として「浮かべ(バ行下二段活用「うかぶ」の連用形)」「とらへ(ハ行下二段活用「とらふ」の連用形)」「迎ふる(ハ行下二段活用「むかふ」の連体形)」「す(サ行変格活用「す」の終止形)」が使われています。また助動詞は「旅」の直後に「に(断定の助動詞「なり」の連用形)」です。ほかに助詞として「の」「に」「を」「と」が格助詞、「て」「して」が接続助詞、「は」が係助詞があります。
最後の文「古人も多く旅に死せるあり。」では、名詞以外は動詞が「死せ(サ行変格活用「しす」の未然形)」と「あり(ラ行変格活用「あり」の終止形)」で、助動詞が「る(完了の助動詞「る」の連体形)」、形容詞が「多く(ク活用の形容詞「おほし」の連用形)」です。また助詞として係助詞「も」と格助詞「に」が使われています。
冒頭部分の対句について
奥の細道の冒頭部分は対句が使われていることでも有名です。対句とは文の中に似たような言葉を並べることで文自体の印象を強める技法を指します。一文目では「月日」と「行きかふ年」、「過客」と「旅人」が使われ、二文目では「舟の上に生涯を浮かべ」と「馬の口とらへて老を迎ふる」が対句になっている仕組みです。
奥の細道では冒頭部分以外にもさまざまな部分で対句技法が使われているため、その点に注目して読んでみるのも1つの読み方といえます。
奥の細道の覚え方はある?覚え方のコツを紹介!
奥の細道の冒頭部分は、特に中学の国語ではよく暗記させて朗読テストを行うケースがあります。このテストに備えるには覚え方を押さえることが大切です。
要点として挙げられるのが先ほども見た対句の部分で、対句で文章全体がリズム良くなっているため、まずこの点を覚えていくのがコツといえます。また出題される部分を一度声に出しながらノートに書き出してみるのもおすすめです。刺激を通じて脳に朗読部分が記憶されるため、簡単に覚えられます。
奥の細道の冒頭部分の現代語訳と品詞分解のまとめ
- 奥の細道は江戸時代の俳人松尾芭蕉が東北や北陸を旅した内容を文章と俳句でつづったものである
- 奥の細道の冒頭部分は旅を時の流れに例えながら、旅への思いを語ったものである
- 奥の細道の冒頭部分では動詞はあまり使われておらず、むしろ助動詞や助詞が多い。また対句技法も使われている
- 奥の細道の冒頭部分をうまく覚えるには、対句部分に注目してリズム良く覚えるとともに、一度全体を読みながら書き出してみると良い