スペイン風邪とは？新型コロナの100年前の世界最悪のパンデミックを解説

中国武漢で発生した新型コロナウィルスの世界的な感染拡大について、世界保健機関（WHO）は3月11日に「パンデミック」（大流行）と宣言しました。

同機関のテドロス・アダノム事務局長は「このウイルスの抑制と制御は可能」と明言するとともに、コロナ抑止について人々の理解や行動が追いつかない可能性について、深い懸念を表明しています。

歴史を紐解いてみると、じつは今から約100年前の1918～1919年にも、新型コロナとよく似たパンデミックが起こっています。それが「スペイン風邪」（スペインインフルエンザ）です。

疫学史上最悪のパンデミックともいわれ、世界総人口の三分の一が感染したともいわれています。ちょっと想像がつかないスケールですね。

「スペイン風邪」とは第一次世界大戦の最中だった1918年に発生し、世界的に流行したインフルエンザです。「風邪」と呼ばれていますが、実際はウイルス性の感染病です。

当時は電子顕微鏡がなくウィルスという概念がなかったので「風邪」と呼ばれていました。20世紀最悪の人的被害を出したといわれています。

ちなみにスペイン風邪といわれていますが、スペインで発生した訳ではないのです。アメリカで最初の流行が起こり、同国のドイツ侵攻とともにヨーロッパにも広まっていきました。

「スペイン風邪」の名前の由来は、スペインで最初に疫病について報道されたためです。スペインは戦争と直接関係がなかったので情報統制などなく、自由に報道できたのです。

スペイン風邪は、アメリカ兵士が豚から感染したのがはじまりといわれています。当時アメリカでは生物兵器の実験や補給体制の研究が行われていました。

その一環としておこなわれた兵営のなかに養豚所を設けるという不衛生な試みが、スペイン風邪ウィルスを生み出したといわれています。

スペイン風邪の感染力は凄まじく、瞬く間に全大陸に蔓延していきました。感染者数は世界人口の約三分の一の5億人といわれています。SNSが発達した時代だったら、もっと多く計上されていたかもしれません。

大戦中に多くの兵士たちが人体にダメージを受けて免疫力が下がっていたことも、感染者数を増やした一因といわれています。

死者は約5000万人といわれていますが、1億人説もかなり有力視されています。当時の世界人口が約20億人なので、人類の20人に1人が犠牲になったことになります。

第一次世界大戦の死者数が1600万人なので、世界大戦すらもはるか上回るペースと致死率で人々を死に至らしめたのです。

皮肉なことに、スペイン風邪の甚大な人的被害は、第一次世界大戦終結の原因となりました。戦場で敵味方かまわず感染していき、バタバタ死んでいくので戦争どころではなくなってしまったのです。

世界史の中でも、これほどまでに人類に大きなインパクトを与えた疫病は他にはないでしょう。