時候の挨拶とは?
1月の季語や、その具体的な使い方をご紹介します。季語は、手紙の冒頭に書く時候の挨拶の中で非常に重要な役割を持つ、季節特有の言葉です。
時候の挨拶とは、手紙の初めに書く季節や気候に関する礼儀文の事です。時候の挨拶は「拝啓」などの頭語の後に続けて書き、漢語調の「○○の候」か、口語調の「○○な日が続きますが」の2種類があります。
時候の挨拶を添えるのは、季節の変化を大切にする日本ならではの習慣で、手紙の中に四季折々の美しさを感じることができます。
季節を表わす言葉や季語を使う
時候の挨拶には季節を表す言葉が必ず入ります。例えば、1月下旬の寒い日には「大寒になり、まさに寒さ極まれりの感がいたします」となります。この場合の季語は「大寒」です。
季節や窓の外の様子を見て、その時々に合った時候の挨拶を選ぶようにしましょう。
1月の手紙などで書き出しに使える季語や文例
1月は新年から始まり、松の内(上旬)・中旬・下旬となるため、季語も月の上旬と下旬では全く内容が変わってきます。
こちらでは1月に使える季語や文例をご紹介します。時期に合った言葉や自分が気に入った表現を選んで、使ってみましょう。
挨拶文に使える1月の季語
「季語」というと俳句に使われるイメージがありますが、挨拶文にも使われます。1月の旬ごとに季語と、実際にその季語が使われている俳句を紹介していますので、季語が表す情景を思い浮かべながら見ていきましょう。
どの時期に使われる季語なのか、今はどの季語を使ったら良いのか、参考にしてみて下さいね。
〇上旬
新春・初春・仲冬
新春の 蝶々来たり 雪の上(渡辺水巴)
初春も 月夜となるや 皃(かお)の皺(しわ)(小林一茶)
仲冬の 水豊かなる 池日ざし(志田素琴)
〇中旬
寒風・小寒・厳寒
寒風の 研き上げたる 星の街 (水田むつみ)
小寒と なりしは名のみ あたたかや(星野立子)
菫咲き 厳寒の御硯井戸(おすずりいど)(御硯井戸 )
〇下旬
厳冬・大寒・酷寒(こっかん)
厳冬が 来る人の瞳を 澄ますべく(能村登四郎)
もの音も なき大寒の 空の蒼(大峯あきら)
酷寒や 日毎小さく なる妻に(相馬遷子)
1月上旬は年の初めに関する季語が、下旬になるにつれて寒さに関する季語が多いことがわかりますね。
1月の季語を使った書き出し文例
時候の挨拶の後には相手の安否を気遣う言葉を添えることで、思いやりのある綺麗な文章になります。また美しい言葉を選ぶことで、手紙を受け取った相手も暖かな気持ちになります。
【例文】
・新春の候、〇〇様にはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
・新年を迎え、皆様にはますますご多幸がありますようお祈りいたしております。
・寒に入り寒さひとしお厳しくなってきました。いかがお過ごしでしょうか。
・厳しい寒さが続きますが、お風邪などひいておられませんか。
1月の場合は新年を迎えた忙しさに加え寒さが厳しい時期ですので、それらを気遣う言葉を選ぶと良いでしょう。
ビジネスなどでも使える1月の時候の挨拶(漢語調)
ビジネスや目上の方に贈る場合など、改まった手紙では漢語調の時候の挨拶を使います。「○○の候」「○○のみぎり」「○○の折」などを使うようにしましょう。また「○○のみぎり」は、もとは女性がよく使っていた言葉です。女性言葉になりますので手紙を書く際は気をつけましょう。
こちらも旬ごとに時候の挨拶とその意味を紹介しています。
1月上旬で使える時候の挨拶
【1月上旬(松の内)の例】
・新春の候(しんしゅんのこう)…新しい年を迎えました。
・初春の候(はつはるのこう)…新しい年の始まりになりました。
・仲冬の候(ちゅうとうのこう)…旧暦では11月、新暦では11月下旬から1月上旬までの季節。
1月中旬で使える時候の挨拶
【1月中旬の例】
・寒風の候(かんぷうのこう)…冬の風が冷たい季節。
・小寒の候(しょうかんのこう)…寒い時期を迎えました。
・厳寒の候(げんかんのこう)…厳しい寒さの季節。
・寒冷の候(かんれいのこう)…寒く冷たい時期になりました。
1月下旬で使える時候の挨拶
【1月下旬の例】
・厳冬の候(げんとうのこう)…冬の寒さが最も厳しくなりました。
・大寒の候(だいかんのこう)…一年で最も寒い季節を迎えました。
・酷寒の候(こっかんのこう)…厳しい寒さがつづきます。
・降雪の候(こうせつのこう)…雪が降り積もる季節を迎えました。
【シーン別】1月の時候の挨拶文例
ここからは、シーン別での1月の時候の挨拶文例をご紹介します。
上記で紹介した季語を使い、ビジネスやお礼状では漢語調、手紙や紹介状では口語調で解説しています。
ビジネスの挨拶文例
1月に送るビジネスの挨拶文では、季語を含めた時候の挨拶のあとに続く相手を気遣う言葉も、仕事に関する言葉を選びましょう。
また個人に宛てたものなのか、会社に宛てたものなのかでも気遣う言葉が変わってきます。
【個人に宛てた場合の例】
・新春の候、ますますご活躍のこととお喜び申し上げます。
・寒冷のみぎり、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
【会社に宛てた場合の例】
・厳寒のみぎり、貴社の一層のご繁栄を心より祈念いたします。
・大寒の折、貴社ますますご繁栄のことと心からお慶び申し上げます。
手紙の挨拶文例
手紙を送る相手によっては、漢語調の時候の挨拶を使うと堅苦しく感じてしまいます。1月に親しい友人などに手紙を送る場合は、柔らかい表現の口語調を使いましょう。
【文例】
・松の内も過ぎ、厳しい寒さが続く毎日ですね、いかがお過ごしでしょうか。
・おだやかなお正月をお迎えのことと存じます。お変わりありませんか。
・寒さが一段とつのって参りました。皆様お変わりございませんか。
お礼状の挨拶文例
1月に出すお礼状には、季語を入れた時候の挨拶に加えてお世話になった感謝の言葉を添えます。
また、お礼状はできるだけ早く出すのがマナーです。
【文例】
・新春の候、貴社におかれましては益々ご清栄の事と心よりお慶び申し上げます。先日はご多忙中にもかかわらず、貴重なお時間を割いていただきありがとうございました。
・大寒の候、平素は格別のお引立てを賜り厚く御礼申し上げます。このたびは大変お世話になり、ありがとうございました。
案内状の挨拶文例
1月に送る案内状の挨拶文では、季語を含めた時候の挨拶と相手を気遣う言葉を述べてから本題に入ります。
【文例】
・厳しい寒さが続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
さて、(案内の内容を記入)。
・相変わらずの寒さで、春の訪れが待たれる昨今ですが、皆様お変わりありませんか。
さて、来たる〇月〇日、○○では~(案内の内容を記入)。
1月の別名を季語として使う書き出し方法も
これまではよく使われる季語で解説しましたが、最後に1月の別名を紹介します。
これらは和風月明(わふうげつめい)といい、昔の呼び方を季語にしたものなので、一月の別名を季語として時候の挨拶に入れることも出来ます。
ちょっとおしゃれな時候の挨拶で、一味違う手紙を書いてみても良いですね。
【1月の別名】
・祝月(いわいづき)
・元月(がんげつ)
・春孟(しゅんもう)
・歳始(さいし)
・初空月(はつそらづき)
1月の季語と時候の挨拶文例のまとめ
- 時候の挨拶とは「○○の候」など、頭語のあとに続く季節に関する礼儀文のことです。
- 俳句で使われるイメージの季語ですが、時候の挨拶にも使うことができます。
- 月の旬ごとに時候の挨拶の内容は変わってきます。
- 漢語調と口語調を送る相手ごとに使い分けましょう。
時候の挨拶とは?