時候の挨拶とは?
時候の挨拶とは季語などを使って「季節感を表わす挨拶の言葉」のことです。手紙の書き出しで季節に触れるのは日本の伝統的な習慣であり、豊かな自然と四季の移り変わりを大切にしている日本人の心が反映されています。
季節を表わす言葉や季語を使用
時候の挨拶には、口語調と漢語調の2通りがあります。どちらの場合も季節を表わす言葉や季語を使用します。
- 口語調・・・私的な手紙や女性の手紙で用いる。やさしく穏やかな印象。
- 漢語調・・・公的な手紙やビジネス文書で用いる。簡潔で丁重な印象。
【基本形式】
- 前文:用件に入る前の挨拶文のこと。頭語(「拝啓」など)+時候の挨拶+先方または当方の安否の挨拶+お礼やお詫びの挨拶の順で組み立てていきます。
- 主文:用件を述べる最も大事な部分。起辞(「さて」など)から始めます。
- 末文:文の締めくくりの部分。結びの挨拶と結語(「敬具」など)で終わらせます。
俳句でも使われる10月の季語
ここでは、俳句でも使われる10月の季語をご紹介します。
季語は季節を表わす言葉のひとつであり、短い言葉で四季を表わす究極の略語ともいえます。主に俳句で使用されますが、手紙でも活用できます。
【10月の季語一覧】
- 時候:そぞろ寒(思いがけなく感じる寒さのこと)・秋気澄む(冷気を含んだ空気により大気が澄み渡ること)・朝寒・夜寒・秋深し(紅葉の見ごろも過ぎ、秋が終わりに近づいたころのこと)・行く秋・秋惜しむ・夜長(日暮れの早い秋の夜が長く感じられることから)・十月
- 天文:釣瓶落とし(つるべおとし:日が短くなる秋は思いのほか暮れるのが早いことの例え)・露寒・秋晴れ・秋空・鰯雲・名月・秋風・野分(のわき:秋の野を二つに分けるほどの強い風のこと)・青北風(あおぎた:9~10月の晴れた日に北から吹く強い風のこと)
- 地理:山粧う(やまよそおう:紅葉に彩られた山を形容した表現)・稲田
- 生活:新米・運動会・セーター・コート
- 行事:秋祭・時代祭(10月22日に行われる京都・平安神宮のお祭り)・ハロウィン
- 動物:鹿・鵙(もず)・椋鳥(むくどり)・鴫(しぎ)・秋刀魚(さんま)・秋鯖・虫(俳句の「虫」は秋に鳴く虫の総称)・蝗(いなご)
- 植物:紅葉・落葉・木犀(もくせい:金木犀がよく知られている)・コスモス・栗・柿・石榴(ざくろ)・胡桃(くるみ)・菊・松茸
萌え袖ちゃん
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10月の手紙で書き出しに使える季語や文例
では、10月の手紙で書き出しに使える季語や文例を具体的に見ていきましょう。
上旬・中旬・下旬、さらに、あらたまった場合と親しい場合に分けて記載していますので、時季や相手に合った表現を選ぶことがポイントです。
10月の季語を使った書き出し文例
以下は口語調での10月の季語を使った書き出し文例です。10月の季語一覧でご紹介した季語を活用しています。
【上旬】
- あらたまった場合:「秋晴れのさわやかな日が続いております。」
- 親しい場合:「新米のおいしい季節になりましたね。」
- あらたまった場合:「錦繡(きんしゅう:美しいもみじや花)の名にふさわしい、美しい紅葉が楽しめる季節となりました。」
- 親しい場合:「虫の音に、秋の深まりを感じるころとなりました。」
- あらたまった場合:「落ち葉がはらはらと風に舞う季節となりました。」
- 親しい場合:「新しいセーターやコートがほしくなる季節となりました。」
ビジネスなどでも使える10月の時候の挨拶(漢語調)
次に、ビジネスなどでも使える10月の時候の挨拶をご紹介します。
ビジネスなどの場では、一般的に漢語調が用いられ、「~の候」という形式で使われます。「候」は「季節・時節」という意味で、「みぎり(女性言葉)」「頃」「折」という言葉に置き換えることもできます。
10月全般で使える書き出し
- 仲秋(ちゅうしゅう)の候:気象上の秋は9・10・11月を示し、三つに区分された真ん中の月が仲秋にあたります。
- 秋麗(しゅうれい)の候:空がよく晴れ、暑くも寒くもない秋の清澄さを表します。
10月上旬から中旬で使える書き出し
- 秋涼(しゅうりょう)の候:秋のひんやりとした涼しさを表します。
- 爽涼(そうりょう)の候:さわやかで涼しい様子を指します。
10月中旬から下旬で使える書き出し
- 秋冷(しゅうれい)の候:ひえびえとした秋の気候を表します。
- 秋雨(しゅうう)の候:秋の後半に、しとしとと降る冷たい雨のことです。
10月の季語と時候の挨拶
- 季語は主に俳句で使用されますが、手紙でも活用することができます。
- 手紙の書き出しに用いられる時候の挨拶は、時季や相手に合った表現を選ぶことがポイントです。
- ビジネスの場などでは、一般的に漢語調の時候の挨拶が用いられます。
時候の挨拶