時候の挨拶とは、季語など「四季の変化や風物を織り込んだ季節の挨拶」のことで、相手を思いやる心情を表わすものです。
季節の移り変わりが豊かな日本ならではの習慣であり、手紙を書く上でも大切にされています。
俳句でも使われる12月の季語
ここでは、俳句でも使われる12月の季語をご紹介します。
季語は、季節の様子を表わすために特に定められた言葉のことで、気候はもちろん、動植物や生活に関すること、行事など多種多様です。そのときの状況に合ったものを選ぶことがポイントとなります。
【12月の季語一覧】
- 時候:冬将軍(ナポレオンがモスクワ遠征に失敗したことから、冬の厳しさを表現したもの。)・十二月・師走・年の暮・行く年・大晦日・短日(たんじつ)・年の瀬
- 天文:冬麗(とうれい・晴天の冬の日を、春のうららかさに例えて表現した言葉。)・木枯(こがらし)・霧氷・初雪
- 地理:初氷
- 生活:着ぶくれ・毛糸編む・熱燗(あつかん)・おでん・冬籠(ふゆごもり)・炬燵(こたつ)・日記買う・御用納(ごようおさめ)・忘年会・冬休(ふゆやすみ)
- 行事:柚子湯(ゆずゆ)・年越蕎麦(としこしそば)・秩父夜祭(12月3日、秩父の極寒の中で行われる勇壮な祭り)・義士会(12月14日、赤穂浪士討ち入りの日を記念しての祭礼。)・除夜の鐘・クリスマス
- 動物:狐・兎(うさぎ)・鴛鴦(おしどり)・白鳥・寒鰤(かんぶり)・鮟鱇(あんこう)・河豚(ふぐ)
- 植物:寒椿・ポインセチア・シクラメン・橙(だいだい)・大根
萌え袖ちゃん
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12月の手紙で書き出しに使える季語や例文
では、12月の手紙で書き出しに使える季語や例文を具体的に見ていきましょう。上旬・中旬・下旬と分けていますが、季節の挨拶はそのときの気候や五感で感じた言葉を選ぶことが大切です。
12月の季語を使った書き出し例文
以下は12月の季語を使った口語調での書き出し例文です。12月の季語一覧でご紹介した季語を用いています。あらたまった場合と親しい場合の表現の仕方の違いにも注意しましょう。
【上旬】
- あらたまった場合:「師走を迎え、ますますご多忙にてご活躍のことと存じます。」
- 親しい場合:「師走と聞いたとたんに気ぜわしくなる、単純な私です。」
- あらたまった場合:「師走も半ばとなり、お忙しい毎日をお送りのことと存じます。」
- 親しい場合:「ポインセチアの赤い色に心が浮き立つこのごろです。」
- あらたまった場合:「いよいよ年の瀬も押し迫ってまいりましたが、皆様ご隆昌のこととお喜び申し上げます。」
- 親しい場合:「今年も相変わらず、仕事に追われる年の暮れを迎えています。」
ビジネスなどでも使える12月の時候の挨拶(漢語調)
次に、ビジネスなどでも使える12月の時候の挨拶をご紹介します。
ビジネス文書や重要儀礼の手紙では、漢語調を用いるのが一般的です。「~の候」という形式で表わされ、「~の季節になりました」の意味となります。「候」のほか、「~のみぎり(女性言葉)」「~の頃」「~の折」という言葉も使われます。
12月全般で使える書き出し
- 初冬(しょとう)の候:気象上の冬は12・1・2月を示す。冬を三つに区分した最初の月を初冬といいます。
- 師走(しわす)の候:年の暮れが迫った、慌ただしさを表現する言葉です。
12月上旬で使える書き出し
- 初霜(はつしも)の候:その冬、初めておりた霜のことを指します。
- 向寒(こうかん)の候:これから寒くなっていく季節を表わします。
12月下旬で使える書き出し
- 寒気(かんき)の候:冬の骨身にこたえる寒さのことです。
- 歳末(さいまつ)の候:一年の終わりが近づいたころを表わし、すべてが慌ただしい時期のことです。
12月の結びの挨拶文例
12月の結びの挨拶文例についても確認していきましょう。
結びの挨拶とは、手紙の締めくくりの部分です。ビジネス文書では決まった言葉が用いられることが多いですが、相手に好印象を与えて終わらせることがポイントです。
- ビジネス文書:「まずは書面にて〇〇まで申し上げます。」
- 目上の方へ
【中旬】「年の瀬も押し迫り、お仕事もご多忙の時期と存じますが、くれぐれもお体にはお気をつけください。」
【下旬】「新しい年も幸多い年になりますよう、お祈りいたします。」
- 親しい相手へ
【中旬】「忘年会のシーズンですが、飲みすぎにはくれぐれもご注意ください。」
【下旬】「今年もあとわずか、悔いのない一年にいたしましょう。」
【シーン別】12月の時候の挨拶文例
最後に、シーン別の12月の時候の挨拶文例をご紹介します。これまでに説明してきたことの応用として、手紙の基本構成に沿って組み立てていきます。
ビジネスの挨拶文
【文例】取引先への季節の挨拶状(歳暮)
拝啓 向寒の候、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。平素はたいへんお世話になっております。
つきましては、~
(中略)
なお、末筆ながら、〇〇様はじめご家族の皆様のますますのご健康とご多幸をお祈り申し上げます。敬具
お礼状の挨拶文
【文例】お歳暮へのお礼状
拝啓 向寒の候、皆様にはますますご健勝にお過ごしのことと心よりお喜び申し上げます。
さて、~
(中略)
寒さ厳しき折から、皆様にはくれぐれもご自愛のほどをお祈りいたします。
まずは略儀ながら書面にて御礼申し上げます。敬具
招待状の挨拶文
【文例】忘年会の案内状
拝啓 今年もいよいよ押し迫ってまいりました。
つきましては、~
(中略)
年の瀬でお忙しい毎日とは思いますが、この一年を振り返る一夕を持ちたいと思います。万障お繰り合わせのうえ、ぜひご出席いただきとう存じます。敬具
12月の季語と時候の挨拶のまとめ
- 時候の挨拶とは、四季の変化や風物を織り込んだ季節の挨拶のことです。
- 口語調と漢語調がありますが、どちらも季節を表わす言葉や季語を用います。
- 12月の季語には、冬の美しさや厳しい寒さを表現する言葉が数多くあります。
この記事で紹介する12月の季語を手紙やメールに活用してみましょう。