龍神さま
「夏越の大祓」とは?
夏越の大祓(なごしのおおはらえ)とは、1月1日の元旦から6月晦日(6月末)までの半年間に心身についた不浄な物を祓い、清々しく過せる状態にする神事のことです。
この神事では「茅(ちがや)」という草で編んだ輪っかをくぐることから、夏越の大祓は「茅の輪くぐり」とも呼ばれます。
他にも、「名越の大祓」との表記や「水無月の大祓」という呼称があります。
ここでいう「身についた不浄なもの」とは自分の心身の穢れ、そして災厄の原因となる罪や穢れを指します。夏越の大祓ではこうした罪や穢れを祓うことで、無病息災などのご利益が授かれます。
神主さん
神道における罪、穢れについてですが、
穢れ…「気枯れ」「気離れ」ともいいます。エネルギーが枯渇している状態です。また、死や血と関わることで穢れがつくとされています。
罪…神様からいただいた身体を我欲で「包み隠す」こと。また、大祓においては「天つ罪」「国つ罪」という罪を指しますよ。
夏越の大祓 歴史・由来
夏越の大祓の歴史や由来について、「大祓」について触れながら見ていきます。
「大祓」の由来
古事記には、イザナギノミコトが黄泉の国で背負った穢れを禊祓い(みそぎはらい)をしたとも書き記してあります。ほぼ同時期に編纂された日本書紀には宮中行事として大祓が天武天皇の時代(672年~684年)に執り行われていたと記されています。
これらのエピソードは大祓の由来となっており、日本人にとって「祓(はらい)」は穢れから身を守る為の大切な神事だったのです。そして中世以降、神社で年中行事の一つとして広まりました。
古代日本では1年が6カ月と考えられていました。夏越の大祓は今で言う1月1日(元旦)から6月30日までの半年を無事に生活できたことへの感謝、そして心身の穢れや罪をお祓いする大切な一日であったわけです。一方、7月1日から12月31日までの半年間の穢れや罪は「年越の大祓(としこしのおおはらえ)」で祓います。
年2回の大祓
- 6月30日は6月晦日(夏越の大祓)
- 12月31日の大晦日(年越しの大祓、大晦日の大祓)
「茅の輪くぐり」(夏越の大祓)の由来
夏越の大祓では「茅の輪」をくぐることが多いことから、「茅の輪くぐり」とも呼ばれますが、これは蘇民将来(そみんしょうらい)の説話が由来となっています。
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スサノオノミコトが旅の途中に宿を借りようと立ち寄った村で、裕福な巨旦将来(こたんしょうらい、蘇民将来の弟)に宿泊を願い出ますが冷たくあしらわれます。一方、貧しいながらも心の優しい蘇民将来は、精一杯のおもてなしをします。
後日、改めて村を訪れたスサノオノミコトは蘇民将来に「茅の輪を身に付けなさい」と言います。蘇民将来の娘は茅の輪の腰飾りをつけたことで疫病を免れることができ、その後も子孫繁栄しました。
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この説話により、茅の輪が無病息災のお守りとして信仰されるようになりました。
江戸時代になると、茅の輪を腰に付ける習慣から、茅の輪をくぐる習慣になったといわれています。
大祓(大祓式)の内容
夏越の大祓の祭典(大祓式)で行われる神事について紹介していきます。
- 大祓詞(おおはらえのことば)奏上
- 切麻でお祓い(切麻:小さく切った四角い白い紙と麻)
- 形代(かたしろ)をお祓い
- 茅の輪くぐり
- 形代流し
- 直会(なおらい。神事の最後に参加者一同で神酒を戴く)
神主さん
形代や茅の輪くぐりについては、後で詳しく解説いたしますね!
ご利益
夏越えの大祓では心身の清めや浄化ができます。無意識のうちに侵してしまっている過ちや罪、己に付着してしまった穢れを払拭し清浄な心身となることができて、次のようなご利益をいただけます。
大祓で授かれるご利益
- 無病息災
- 厄難削除
- 交通安全 など
「夏越の大祓」ですることは?
ここからは夏越の大祓ではどのような神事がなされているのかを解説します。
人形・形代
貴船神社 夏越大祓式 大川路の儀
— 今宮康博 (@yasuhiroimamiya) June 27, 2019
令和元年6月30日 (日曜日) 午後4時頃より
大祓式にて穢れを移した人形は
大川路の儀にて貴船川に流されます。
貴船神社では環境に配慮し、
ほんの数秒で水に溶ける人形を使用しています。
#貴船神社 #茅の輪くぐり #夏越の祓 #茅の輪 #夏越大祓式 pic.twitter.com/VPJT2NblDE
夏越の大祓では和紙で人の形に仕上げられた人形(ひとがた。形代・かたしろとも言う)を使います。
人形が自分の身代りとなって穢れを持っていってくれるのです。
- 人形に氏名・年齢を記した後に頭からつま先まで撫でていき、身体の外についた穢れを人形に移します。調子の悪い身体の部位があれば、そこは念入りに人形で撫でてみましょう。
- そして、人形に3回息を吹きかけて内面の穢れも移します。
6ヵ月間の穢れを移した人形はお祓いして水に流したり、お焚き上げをしたりして清められます。
書き方
夏越の祓の人形を納めてきました pic.twitter.com/1PBqP98zce
— もふ (@kikuzou1717) June 27, 2018
それでは自分の身代わりとなってくれる人形(形代)の書き方を説明していきましょう。
①人形に名前、年齢を書く
②人形で体を撫でる。調子が悪い場所は特に念入りに撫でて穢れを人形に移す。
③人形に息を吹きかけ、体内そして心の穢れを人形に移し身代わりとなってもらう。
④人形を川(水)に流したり、お焚き上げをしたりして穢れを流します。
(神社によって異なる点もあります)
龍神さま
動画で見ることで更に手順が判りやすくなります。チェックしてみましょう。
茅の輪くぐり
夏越の大祓では茅の輪(ちのわ)を編んで設置する神社も多くあります。茅(かや)は茅の輪を作る際に使われる植物で、いね科の植物のチガヤやススキなどの総称です。耐水性が非常に高いことから、昔は茅の茎を使って屋根を葺くのに使っており、これらを茅葺屋根(かやぶきやね)と呼んでいます。
茅は古くから厄を払う力を持つ植物として重宝がられ、草の持つ力で浄化や魔除けに利用されてきました。
方法
一般的に上記の様な手順になっていますが、神社や地域によって風習が異なる場合があります。各神社の案内に従いましょう。
初穂料
大祓の際に用意するお金は「初穂料(はつほりょう)」といいます。
初穂料の金額は一般的には500円~3,000円程となっています。元々初穂料には金額の指定は無いため「気持ち(思し召し)」をおくると捉えますが、茅の輪や人形の準備には少なからずお金がかかっていることを考えると、最低でも500円は収めたほうが神様も安心するでしょう。
神主さん
初穂料に悩む民が多いと聞いているが、初穂料は元々お供物なのだよ。初穂とはその年の最初に収穫した農作物で、昔はそれを神様に奉納していたのだ。
今回は日本に古くから伝わる宮中祭祀、夏越の大祓について紹介します!