シンギュラリティというもの
「シンギュラリティ」は日本語では特異点と訳されますが、実際日本では今回解説する技術的特異点という意味で使われることが多いようです。あくまで仮説ですが、シンギュラリティが到来することによって人類の生活が大きく変わると言われています。
ではシンギュラリティ、つまり技術的特異点とは一体どういう意味なのでしょうか。複雑な概念ですが本記事ではシンギュラリティの意味やその影響についてわかりやすく解説していきます。
技術特異点とは
技術的特異点とは、人工知能の持つ知能が全人類の持つ知能を上回る時点を意味します。
現在人工知能の開発は飛躍的に進んでおり、それに伴いその能力も高くなっています。人工知能が成長する過程の中でその能力が全人類の能力を上回る時、それを人類よりも賢くなる時点を技術的特異点=シンギュラリティといいます。
人工知能とシンギュラリティ
人工知能の歴史は古く、1950年代頃から開発が始まりました。初期の人工知能はまだ簡単なことしか出来ず、人間にとっての道具でしかありませんでした。
しかしその後人工知能は飛躍的な成長を遂げ、チェスや将棋でプロに勝つといったこともありました。このまま開発が進めばある時点で人工知能の方が人類全体よりも賢くなると予測されるようになりました。
シンギュラリティと2045年問題
シンギュラリティに関連して、2045年問題と呼ばれる問題があります。これはシンギュラリティが2045年に起こると予想されていることからそう呼ばれています。
現時点では人工知能よりも人類の方が知性が高いため、人工知能は人間にとっての道具という立場にあります。しかしシンギュラリティの後は人工知能の方が知性が高いことになり、人間が思いつかないようなことを自ら考えて開発するようになるとされています。
それによってシンギュラリティが起こるとされている2045年以降の世界は人類の予測が及ばないことになるため、2045年問題と呼ばれるようになりました。
第四次産業革命
産業革命はこれまでに三度起きました。一度目は18世紀以降の蒸気機関によって、二度目は20世紀初頭の石油や電気によって、三度目は1970年以降のインターネットによるもので、それぞれの産業革命で産業の構造が激変しました。
そしてこれから、人工知能の発達が四度目の産業革命を引き起こすと言われています。第四次産業革命では人工知能やIoT技術によってこれまで人の手で行われていた工程を人工知能搭載ロボットが担うなどして、製造過程が大幅に効率化すると予想されています。
2045年に訪れる技術特異点とそれによって起こる問題とは?
2045年に訪れるとされているシンギュラリティですが、これによって起きる変化は一般人が想像する以上に大きいと考えられています。
よく危惧される「人工知能に仕事を取られる」というのもその一つですが、人工知能が様々なことを肩代わりし効率化することで、社会の構造や生活スタイルが大きく変わるとされています。そうなれば中にはその変化に付いて行けない人も現れ、混乱を引き起こすことが考えられます。
ムーアの法則
インテル社の創業者の一人、ゴードン・ムーア氏は、半導体業界の経験をもとに、半導体の集積率が18か月で2倍になるという法則を提唱しました。これをムーアの法則といいます。
これはコンピュータの頭脳にあたるCPUの性能が18か月で2倍になり、更にコストが半分になるということを意味しており、人工知能の飛躍的な成長を裏で支えています。
シンギュラリティによって何が起こるのか?
これまでの歴史でも、産業の革命は社会の構造を大きく変えてきました。そして現代の産業に革命を起こすと言われている人工知能ですが、実際にシンギュラリティを迎えた時には、人間社会にどのような影響をもたらすのでしょうか。
労働力が人間からロボットへ?
人工知能の発達によって起こることとしてよく言われているのが「人工知能に仕事を取られる」ということです。
人工知能によって第四次産業革命が起これば、これまで人間が行っていたことの多くを人工知能が代わりに行えるようになります。そうなると結果的に、業種によっては主要な労働力が人間からロボットに変わると考えられます。
現に今後数年以内に無くなる仕事として数多くの仕事が挙げられており、その原因は人工知能の発達により機械化・自動化が可能になることで、その仕事をするのが人間である必要性が無くなることなのです。
ロボット産業の発展?
人工知能を駆使して既存の製造業を自動化することになれば、当然人工知能を搭載したロボットの存在が不可欠になります。
よって人工知能が発達し、出来ることが増えるのに従い、その指示に従って動くロボットの開発も発展すると考えられます。人工知能の発展はロボット産業の発展も同時に引き起こすことになるのです。
仕事の内容の変化
人工知能の発達によりそれまで人間がしていた仕事の多くを肩代わり出来るようになると言われており、結果的に多くの人が職を失うと言われていますが、人工知能にも得意不得意はあります。人工知能は正確さや素早さが重要な作業を得意とする一方、人の気持ちに寄り添うような複雑な仕事は不得意とされています。
そのため人間は人工知能では代わることの出来ないクリエイティブな仕事やきめ細やかなおもてなしをする仕事、人の温もりを感じられるような仕事などが選択肢として残ることになります。
シンギュラリティが起こる意味
そもそも何故シンギュラリティが起きるのか?と疑問に思うかもしれません。シンギュラリティによる影響を怖れ、否定的な意見を持つ人がいる一方、実際には世界がシンギュラリティを必要としている側面もあります。
というのも飢餓や貧困、環境汚染などの問題を解決し、国際的な平和の実現に向かっていくためには人類をも越えた知性を持つ存在が必要と考えられ、それを実現するために人工知能の開発が急がれているという背景があるのです。
どうしてシンギュラリティが起こると考えられるのか?
先に述べた通り、現状人工知能の知性は指数関数的に向上しています。最初はごく単純な作業しかできなかった人工知能ですが、数年前の時点で既にチェスでは人工知能に敵わないとされており、将棋でも人工知能がプロ棋士に勝っています。
人間の知性に対して人工知能の知性は成長速度が段違いです。それは先述のムーアの法則の影響があると考えられます。こうしたことからシンギュラリティは非常に現実味を帯びたこととして考えられているのです。
シンギュラリティが生活に及ぼす影響
人工知能の飛躍的な成長によって第四次産業革命が起き、産業ひいては社会の構造が大きく変わるとされていますが、人々の実生活においてはどのような影響があるのでしょうか。ここからは社会という大きな規模ではなく一人一人の生活に実際どんな影響が出るのかという視点で解説していきます。
基本的な生活はどう変わる?
シンギュラリティが起これば、人工知能が様々な仕事を人間の代わりに行うようになるので、人間の代わりに利益を生み、経済をまわしてくれることになります。そうなれば人間が働かなくても生活していける世の中になることも考えられます。
それを可能にする制度としてベーシックインカムというものがあります。これは仕事をしていなくても生活に最低限必要なお金が支給される制度で、シンギュラリティによって仮に多くの失業者が出たとしても、人工知能が生み出す利益によってベーシックインカムの導入が可能になるのではとされています。
シンギュラリティについて真剣に考えてみよう
都市伝説として扱われることの多いシンギュラリティですが、現に人工知能の持つ知性は指数関数的に伸びており、既にかなり現実味のある問題です。
シンギュラリティを迎えれば世界の構造は激変すると考えられています。単なる都市伝説としてではなく、現実に起こりうることとして今のうちから真剣に向き合うことが大切になってくるでしょう。