「カラチャイ湖」とは?放射能汚染で生き物を寄せ付けなくなった湖の現在

「カラチャイ湖」とは?放射能汚染で生き物を寄せ付けなくなった湖の現在

放射能汚染といえばチェルノブイリや福島原発など多くの事故現場が挙げられますが、汚染度が世界でトップクラスの「カラチャイ湖」については意外と詳細を知る人は多くありません。本記事ではそんな謎に包まれたカラチャイ湖について、汚染の原因や被害の詳細を解説していきます。

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  1. 1「カラチャイ湖」とは?
  2. 2カラチャイ湖でおきたこと
  3. 2.1ウラル核惨事とは
  4. 3カラチャイ湖の危険性はチェルノブイリ以上
  5. 4カラチャイ湖の現在について
  6. 5カラチャイ湖の未来
  7. 6カラチャイ湖のまとめ
DATSUさん

DATSUさん

「カラチャイ湖」について検索するとは、君も物好きだね……。
カラチャイ湖は放射能事故で汚染された湖なんだ。

マイルド君

マイルド君

「裏セレスティア」の時間だな…。

「カラチャイ湖」とは?

霞んだ湖
フリー写真素材ぱくたそ

カラチャイ湖はロシア中部のウラル山脈南部にある0.51平方キロメートルの小さな湖です。

カラチャイ湖は、生産連合マヤクのコンビナート付近にある直径約5kmの円形の湖。生産連合マヤクは、初期の頃、再処理廃液をこの湖へ無処理で放流した。このためカラチャイ湖に連なるテチャ川、イセト川、トボル川は、放射能で汚染した。

水面標高: 251 m
面積: 0.15 km²
流入元: リカ・チェチャ
沿岸国: ロシア
周辺都市: オジョルスク

カラチャイという名前は、タタール語を含むいくつかの北西チュルク語で「黒い水」または「黒い小川」という意味があります。富士五湖の一つ「精進湖」くらいの大きさです。

「カラチャイ湖」とはロシアのウラル山脈南部に広がる湖でしたが、現在ではコンクリート等で封印された埋立地となっています。

理由は旧ソ連の軍事開発に伴う深刻な放射能汚染であり、放射性物質の濃度が高く被爆した人の数が異常に多いため、チェルノブイリ原発より危険な場所だったと指摘する専門家も少なくありません。

酷い時期には1時間で死に至るほどの大量の放射能が湖を覆っていたというデータもあり、カラチャイ湖は魚などの生物が生息できないだけでなく、人が近づくことすらできない場所でした。レントゲン撮影の被ばく量が2ミリシーベルトに対し、湖畔の放射線量は6シーベルトと非常に高い値でした。

汚染されていく過程やそれに伴う人的被害、そこから2015年湖が埋め立てられるまでの流れを次項以降で詳しく解説していきます。

参考 世界で最も危険なカラチャイ湖が、「自然いっぱい」みたいなノリで紹介されている | マイナビニュース
世界で最も汚染された危険な場所として知られる「カラチャイ湖」が、「自然いっぱい」みたいなノリで紹介されていると、ネットで話題になっている。
カラチャイ湖の空撮写真
グーグル検索すると、カラチャイ湖の衛星写真が見れます。

特徴的な形をしていますね。
死んでも泳いではいけない世界の湖
カラチャイ湖も紹介されています

カラチャイ湖でおきたこと

工場跡地
フリー写真素材ぱくたそ

カラチャイ湖の汚染が本格的に始まったのは第二次大戦後であり、旧ソ連がアメリカに対抗しうる核兵器の開発に着手したことがきっかけでした。廃棄物や汚染水の投棄先として利用された湖はたちまち放射性物質で満たされ、魚などの水中生物はあっという間に死滅してしまいます。人的被害もこの時点で確認されていたものの、核開発を最優先とする情勢だったため取り沙汰されることはありませんでした。

そんな中、1957年のウラル核惨事によって湖周辺の地域に大量の放射性廃棄物が飛散し、都市によっては住民の6割以上が被爆するという大惨事が発生します。その後、1960年代に発生した干ばつに伴い湖底に堆積した放射性物質が飛散したことで被害はさらに拡大し、最終的には50万人以上の人々が放射能被害を受けたようです。
 

ウラル核惨事とは

焼け落ちる建物
Photo byTheDigitalArtist

ウラル核惨事とは1957年にマヤーク核技術施設で発生した爆発事故であり、放射性廃棄物を貯蔵するタンクが爆発したことで、幅9km・長さ105kmもの地域をあっという間に汚染しました。きっかけは冷却装置の故障であり、タンク内の温度が急上昇したところに火花が生じたことで爆発につながったとされています。

この事故に関しては杜撰な事後処理によって被爆被害が一向に収まらなかったほか、旧ソ連の隠蔽工作によって事故の全容が90年代まで明かされなかったこともあり、ロシアにおける大きな負の歴史の一つとなっています。被害者らへの補償も十分とはいえず、完全な解決への道筋は未だ見えていません。

マイルド君

マイルド君

核関連施設の爆破事故でカラチャイ湖は放射能汚染されたのか…。
「3・11」を体験した日本人にとっては他人事ではないよな。

DATSUさん

DATSUさん

恐ろしいのは、この事故がソ連の工作員によって長年隠蔽されていたことだね。

1976年にソ連の工作員が亡命し、科学雑誌にこの事故をリークするまで「ウラル惨事」は世界に知られなかったんだ。

ウラルの核惨事 (ジョレス・メドヴェージェフ、ロイ・メドヴェージェフ選集)

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DATSUさん

DATSUさん

↑の本の著者がウラル惨事をリークした人だよ。

核事故と隠蔽体質について詳しく知りたい人は読んでみて。

カラチャイ湖の危険性はチェルノブイリ以上

立入禁止
フリー写真素材ぱくたそ

国際原子力事象評価尺度においてマヤーク核技術施設の爆発事故は「レベル6」と指定されており、チェルノブイリ原発事故や福島第一原発事故の「レベル7」よりは一段階軽い事故という扱いになっています。しかし爆発事故の影響を受けたカラチャイ湖は、チェルノブイリをも凌ぐ世界で最も汚染された場所として歴史に名を刻んでいるのです。

それを裏付けるように、1990年にアメリカの天然資源保護協議会が行った調査では、湖近辺の放射線量が毎時6シーベルトという異常な数値を計測しました。また戦後の核開発時代から合わせると実に1億2000万キュリーもの放射能を拡散したとされ、この数値はチェルノブイリのおよそ2倍に相当します。

カラチャイ湖の現在について

土地を慣らす作業車
Photo byRay_Shrewsberry

カラチャイ湖では干ばつによって放射性物質の飛散域が拡大したことを機に、1978年頃からコンクリートブロック等で湖全体を埋め立てる作業がはじまりました。

この作業は2016年12月に完了し、今では湖の存在が地図上から消えていますが、放射性廃棄物そのものは今でも湖底に体積しています。湖は特殊なコンクリート ブロック、岩、および土を使用して湖は完全に埋め尽くされ、「地表近くの恒久的で乾燥した核廃棄物貯蔵施設」として機能しています。

そのためカラチャイ湖では今でも専門家らによる監視・調査が続いており、また土や粗石を用いたさらなる埋め立ても計画されています。その一方で新たな処理場の建設が頓挫してしまったために、ウラル核惨事を招いたマヤーク核技術施設は今でも稼働を続けており、近隣住民の不安が解消される日はまだまだ遠いといえるでしょう。
カラチャイ湖を観光することはできず、埋め建てられた現在でも安全性は確保されておらず、許可を得た人のみが入れる特別な場所のようです。
 

カラチャイ湖の未来

現在は、湖の代わりに「地表近くの恒久的で乾燥した核廃棄物貯蔵施設」となっています。
この場所は継続的に監視されており、将来的には草や茂みで覆われる予定です。

木は植えられない。というのも、木の根は石棺を破壊する恐れがあるからだ。
モニタリング期間が必要ではあるものの、専門家たちはここは安全、竜巻にも乱されない土地、だと話す。

DATSUさん

DATSUさん

カラチャイ湖の放射能レベルについてのほぼ最新の論文がこちらだ。

後半は日本語の訳があるぞ。

Radioactive water contamination and its dispersal in South Ural (Mayak area) – Review Prof. Aleksei Konoplev (福島大学)
福島大学で行われたカラチャイ湖に関するシンポジウム
マイルド君

マイルド君

俺には難しくてさっぱりだが、いまだにカラチャイ湖周辺は汚染されてるってことはわかったぜ。

人間が作りだした核の炎、それは人類の誤った発明だったのかもな。。。

カラチャイ湖のまとめ

工場夜景
フリー写真素材ぱくたそ

カラチャイ湖は核開発の歴史の中で大量の放射能に汚染された湖であり、現在は埋め立てによって湖自体が存在しないということがおわかりいただけたと思います。日本にも高度成長期の公害や複数の原発事故など甚大な環境汚染をもたらした歴史があり、カラチャイ湖で発生したことは決して他人事ではありません。
カラチャイ湖は、核開発と隠蔽の歴史を物語る場所であり、人類が放射能と向き合う上で重要な教訓を与えてくれます。

とはいえ過去を覆すことができない以上、私たちにできるのは失敗を教訓によりよい産業やサービスの形を考え続けることだけではないでしょうか。

セレスティアでは他にも知られざる事故や不可解な事件について取り上げています。興味のある方はリンク先から新たな歴史を探ってみてください。

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