神隠しとはどのような現象か
「神隠し」とは突然人が姿を消したり、消息が分からなくなったりしまう現象を意味しています。
神隠しの意味と由来
「神の仕業としか思えない、摩訶不思議な現象」である神隠しは、その多くは「人間が突然消えてしまう現象」を意味しますが、物が無くなってしまう現象も「神隠し」表現するケースもあります。
神隠しがなぜ起こるのかについては、次のようにいくつかの説が考えられてきました。
天狗隠し、鬼隠しと呼ばれることもあった
「神隠し」は「天狗隠し」や「鬼隠し」と呼ばれることもあります。神の括りには「天狗」や「鬼」なども含まれているためです。
昔、「天狗」は山の神とされ不思議な現象は天狗の仕業だと考えられていました。そのため「天狗隠し」と呼ばれます。また、「鬼」は、人に危害を加えたり人を食べたりすると考えられていたため「鬼隠し」と呼ばれることもありました。
神隠しにあったものは神社などの神域に消えたとされていた
神隠しに遭った人はこの世とあの世の境目である「神域」に消えてしまったと言い伝えられています。
神域とは「神社の境内」や「神が宿る場所」などを示しています。
人々が間違って神域に迷い込まないように結界としてしめ縄が飾られていますが、ふとした拍子に神域に消えてしまう人がいるようです。
神隠しに遭いやすい人とは
「子供」や「出産後の女性」、「知的にハンディを負っている人」は神隠しに遭いやすいと言われています。
心の成長段階にある子供や、産後で不安定な精神状態にある人、知的なハンディにより「他の人と物事の感じ方や考え方が異なる人」は天狗や鬼などの神が入り込みやすく、神隠しに遭いやすいと考えられています。
各地に伝わる神隠しにまつわる言い伝え
数多く存在する言い伝えの中からいくつかピックアップしてご紹介します。
遠野物語の言い伝え
遠野物語は、柳田国男の代表作で岩手県・遠野地方の伝承・逸話が記された説話集です。ちなみに、柳田国男は「自分自身が神隠しに遭いやすい体質」と発言しています。
ここでは遠野物語のなかの有名な物語「サムトの老婆」をご紹介します。
岩手県松崎村サムト地域で起こった出来事です。
ある日娘が姿を消しました。そして、30年後突然老婆となった娘が家族の元に帰ってきました。
老婆は自らの意志で帰ってきたといい、毎年帰って来るようになりました。しかし、老婆が帰ってくる日はなぜか毎回嵐になり、老婆が来ると嵐になると人々は迷惑に感じるようになりました。
そのため、もう老婆が帰って来られないように村の境に石碑を建てました。それ以来、老婆が帰って来ることはありませんでした。
東京八王子の言い伝え
東京都の八王子には、子供が神隠しに遭った場合の対処法が言い伝えられています。
神隠しに遭った子の両親が近くによばり山に行き子供の名前を呼ぶことで、自然と子供が戻ってくると言われています。
また、太鼓を叩きながら「かやせ、もどせ」と叫びながら探し回るという風習もあります。
「かやせ、もどせ」は「返せ、戻せ」と子供を私たちに返して・戻して欲しい、という意味で使われる言葉です。
沖縄の言い伝え
沖縄県では神隠しを「物隠し」とも呼びます。
「消えた人は、櫛を探しに一度家に帰ってくる」と沖縄では言われています。そして、櫛を見つけると再び消えるとのことです。神を祀る者は櫛が必要とされていました。そのため、櫛を取りに家に一度戻るとされています。
そこで家族は櫛を見つけられない場所に隠すのが風習でした。
沖縄の言い伝えは本州より古い型か?
物隠しと呼ばれる、櫛を取りにもう一度戻り再び消息を絶つ沖縄の言い伝えは、天狗や鬼などの仕業だと考えられている本州の神隠しより、古い型の言い伝えとされています。
その他の地域の神隠しにまつわる言い伝え
その他の地域に伝わる神隠しの話をいくつかご紹介します。
帰ってきた少女
千葉県君津市では、かくれんぼ中の少女が突然消える事件がありました。
少女は1週間後、家の前にで保護されました。身体が急に重く声が出なくなり、「1週間後に返す」という謎の声が聞こえたそうです。そして、気づいたら家の前に立っていたと語りました。
浦島太郎
「浦島太郎」も神隠しに遭った人物だと言われています。
この話は浦島太郎目線であり、竜宮城と元居た場所とは時の流れが違うことが読み取れます。村人目線で考えると、浦島太郎が神隠しに遭い、ある日突然帰ってきたことになります。