田縣神社の「豊年祭」とは
愛知県小牧市の田縣(たがた)神社で行われている「豊年祭」の概要、およびその歴史やご利益について解説します。
豊年祭の歴史は長い
豊年祭は愛知県小牧市にある田縣神社で、毎年3月15日に催されています。「男根祭り」や「ちんこ祭り」としても認知されている非常にユニークな奇祭で、その異名の由来は木曽檜(きそひのき)で造られた巨大な男根・大男茎形(おおおわせがた)の御輿(みこし)を担ぐことにあります。
木彫りの男根を奉納する慣習自体は1000年以上も前から存在し、平安時代に編纂された古典「古語拾遺・御歳神(みとせのかみ)の条」での記述が由来となっています。しかし元々は五穀豊穣を願う素朴な田遊びであり、男根の大きさや行列の規模が大きくなっていったのは江戸時代からといわれています。
そして戦後は男根だけが更に大きくなっていき、最終的に直径60センチ・長さ2メートル余りの大男茎形(おおおわせがた)が完成。田遊びの一種だった小さな祭りは、今や立派な観光資源になりました。
豊年祭のご利益
生殖器を祀る奇祭である以上、子孫繁栄や恋愛成就などのご利益があることは想像に難くないでしょう。しかし豊年祭は古来より祈られていた五穀豊穣に加え、無病息災や商売繁盛など様々なご利益をもたらす祭りです。このことから同祭は子供に限らず、あらゆるものを生み育てるための儀式だといえます。
田縣神社は鐘から賽銭箱まであらゆるものが男根の形をしており、境内の如何なる場所でも等しく子孫繁栄などを祈ることができるのが魅力です。また珍宝窟と呼ばれる場所には睾丸を模した2つの玉石が置いてあり、そばにある石碑には「右側をさすれば金運、左側をさすれば子宝に恵まれる」と記載されています。
田縣神社の「豊年祭」は天下の珍祭?豊年祭りの内容を紹介
豊年祭は単なる男根祭りではなく、複数の儀礼を経て行われる立派な神事です。本項では、豊年祭の具体的な段取りを準備段階から詳しく紹介します。
籤取式(くじとりしき)
籤取式(くじとりしき)とは、祭りに奉仕する人やその役目・順番をクジによって決める儀式であり、京都の祇園祭をはじめ多くの神事の準備段階として執り行われています。心身を清めた宮司がクジ引きによってご神意をうかがい、祭り当日の人員配置を厳粛かつ公正に選出します。
田縣神社で行われる籤取式では、豊年祭当日に小ぶりの男茎形(おわせがた)を抱えて歩く女性「綱持」をクジにより5名選びます。儀式は例年2月20日、豊年祭の一ヶ月ほど前に田縣神社本殿で斎行されます。
斧入祭(おのいれさい)
斧入祭(おのいれさい)は豊年祭に先立って、御輿に納める大男茎形を一から彫り上げる神事です。完成品が直径60センチ・長さ2メートルという大物になるため、素材となる木曽檜にはそれより若干大きく、かつ樹齢200年を超えるものが主に使われます。
斧入祭は例年3月3日の田縣神社境内にて、豊年祭に従事する役員の多くが参列する中で執り行われます。巨大かつリアリティのある大男茎形を毎年作り直しているというのは驚くべきことで、ひとたび見物すれば豊年祭にかける多くの人の思いが伝わってくることでしょう。
御輿(みこし)
豊年祭で担ぐ御輿は3種類あり、1つ目の鳳輦(ほうれん)には祭神「御歳神」の御神像、2つ目の御前御輿には祭神「玉姫命(たまひめのみこと)」の夫の御神像をそれぞれ納めます。そして3つ目の陽物御輿にお供え物である大男茎形を納めれば、いよいよ祭りの準備が完了です。
御輿の担ぎ手は42歳の厄男と決まっており、豊年祭当日には行列をなして神社までの道を練り歩きます。なお行列には籤取式で選ばれた綱持の女性も同行しており、彼女らが抱える男茎形は見物客も触れることができるので、見かけたらぜひ手を伸ばしてみましょう。
田縣神社「豊年祭」の様子を紹介!
豊年祭は天下の奇祭として広く知られているだけあって、女性や外国人、コスプレイヤーなど多くの人で賑わっています。屋台も多く立ち並んでおり、何かを祈願せずとも純粋にお祭りとして楽しめる雰囲気です。
豊年祭いやらしい出店四天王
— marutsuki (@Series2000_G51) March 15, 2016
これを男女問わず嬉々として食べ歩く光景はクレイジーとしか言いようがない pic.twitter.com/eH915lPZ0G
豊年祭では男根を模したオブジェなどが各所で見られ、中でも屋台で売られている食べ物は絶大なインパクトを放っています。生々しい形状もさることながら、「ばなちん」など名前が直球すぎる商品も多く、みんなで食べ歩けば盛り上がること間違いありません。
「豊年祭」でピンと来なかった方向けに田県神社の雰囲気をほんのりお伝えする画像をいくつか。 pic.twitter.com/E6ZrztJFQ1
— ちらいむ (@chilime) March 15, 2016
さしあたり願い事がない人でも、田縣神社のシンボルである男根オブジェの数々にはぜひ手を合わせておきましょう。男根に祈ること自体が一生の思い出になるだけでなく、ひとたび祈れば子宝に健康に金運など、一生もののご利益が期待できます。
田縣神社・豊年祭なう。ところでこいつを見てくれ。こいつをどう思う? pic.twitter.com/NIKkKpE3Jo
— 嘯月庵 (@shogetsuan) March 15, 2014
屋台やお参りスポットなど多くの場所で男根を楽しめるものの、やはり存在感の強さは大男茎形が圧倒的です。2メートルもの男根が境内に担ぎ込まれればいやでも目が奪われ、実際に動画内でも多くの見物客がカメラを向けています。この大男茎形を拝まずして、豊年祭は語れないでしょう。
田縣神社の「豊年祭」の開催はいつ?
2020年に開催される令和最初の豊年祭について、開催日や田縣神社へのアクセスをまとめました。
(次回開催予定)
籤取式:令和2年2月20日
斧入祭:令和2年3月3日 午前9時より
豊年祭:令和2年3月15日 午前10時より
(開催地・交通アクセス)
開催地:田縣神社
開催地住所:愛知県小牧市田県町152
交通アクセス:名鉄小牧線 田縣神社前駅より徒歩5分
なお豊年祭当日は交通規制が実施されるうえ、駐車場も用意されていないため、現地までは公共交通機関を利用してください。
田縣神社と対になってる大縣神社の豊年祭
大縣(おおあがた)神社は愛知県犬山市にある神社で、尾張国開拓の祖神とされる神を祀っています。田縣神社とは対照的に女性器を模した石像「姫石」を奉納しており、こちらも安産や縁結びといったご利益が期待できます。
大縣神社の豊年祭は例年3月15日の直前の日曜日に行われ、女性器をかたどった山車(だし)などが大縣神社への道を移動します。なお田縣神社の同祭に比べると性器のリアル感は控えめで、女性問題に敏感な現代の潮流に配慮した形となっています。
また山車とは別の地点から神幸行列が街を練り歩き、この行列を先導する猿田彦(さるたひこ)は天狗の原型と言われています。猿田彦が行列の先頭に立つ姿は全国の神幸祭で見られ、日本神話の天孫降臨の話が由来となっています。
田縣神社から大縣神社までは徒歩40分ほどの距離なので、多忙でなければ有休を取るなどして双方の豊年祭を楽しむのがおすすめです。
田縣神社「豊年祭」のまとめ
- 豊年祭は子孫繁栄や五穀豊穣を願って木彫りの男性器「大男茎形」を奉納する神事であり、その大きさは直径60センチ・長さ2メートルにも達する。なおこの慣習は1000年以上前から存在する。
- 豊年祭では42歳の厄男たちが御輿を担ぎ、また綱持と呼ばれる5人組の女性が小ぶりの男茎形を抱えて道を練り歩く。また豊年祭に先立って行われる「斧入祭」にて、毎年新しい大男茎形が彫られている。
- 田縣神社は鐘から賽銭箱まであらゆるものが男根の形状をしており、豊年祭では男根を模した食べ物を売る屋台が軒を連ねる。