「ねまる」の意味とは
「ねまる」は九州地方では「腐る」「ダメになる」、東北地方では「座る」「止まる」という意味がある方言です。
しかし、「ねまる」の意味はそれだけではありません。
- 黙って座る
- くつろいでいる。
- 寝る。眠る。
- 平服する。
- ねばる。食べ物がくさる。
さらに使われている地方も、この記事で取り上げている九州、東北だけでなく、もっと広範囲であることが考えられます。つまり「ねまる」は、地方によっていくつもの違う意味を持つ不思議な方言といえるでしょう。
「ねまる」は九州や東北の方言
上述したように、「ねまる」は九州地方だけでなく、東北地方でも使われている方言の1つです。
九州地方で「腐る」や「ダメになる」という意味で使われている「ねまる」の由来は、「食べ物を寝(ね)かせて待つ(まつ)ことで腐らせてしまう」ことからとも言われています。
そして、17世紀初頭に九州・長崎県で発行された、日本語をポルトガル語に翻訳した『日葡辞書』には「ねまる」の項目があり、「腐る」と「黙座する」の2つの意味が記載されていました。
一方、東北地方で「ねまる」は「腐る」とは違う意味で用いられており、主に「座る」や「止まる」という意味で使われています。
江戸時代の俳人である松尾芭蕉は、東北・北陸地方を旅した紀行文学『奥の細道』の中で「涼しさを わが宿にして ねまるなり」という俳句を詠んでいます。
つまりこれらを総合的にみると、昔から「ねまる」という言葉は使われており、その当時から「腐る」と「座る」の両方の意味があったことがわかります。
「ねまる」の使い方の例
九州地方で「腐る」や「ダメになる」という意味で使われている方言「ねまる」の使い方を例文とともにご紹介します。
「あちゃ~、お味噌汁がねまっとーばい。」
この例文を標準語に直すと「あちゃ~、お味噌汁が腐ってるよ」や「あちゃ~お味噌汁がダメになってるよ」となります。
この使い方が最もポピュラーな使い方で、食べ物や飲み物などが腐った時に使われます。
また、「~ばい」は福岡県や熊本県で使われる方言で、標準語に直すと「~よ」や「~だよ」といった言葉になります。
「常温で置いてたらねまらないかな~。」
これは標準語に直すと「常温で置いてたら腐らないかな~。」や「常温で置いてたらダメにならないかな~。」という意味の例文です。
「ねまる」という言葉はすでに腐っているものだけでなく、腐ってしまうことを心配する際にも使われます。
「そんなに考えこんでばかりだと、ねまるよ~。」
チャーリー
ぼくは、あの時何をすれば良かったんだろう。
上京君
そんなに考えこんでばかりだと、ねまるよ~。
この文章は「そんなに考え込んでこんでばかりいると、ダメになるよ~」という意味になります。
このように、食べ物が腐ってダメになってしまうことだけでなく、人がダメになってしまうという意味でも「ねまる」が使われます。
- 「ねまる」の意味は、九州では「腐る」「ダメになる」、東北では「座る」「止まる」
- 主に九州で使われている方言だが、東北やその他の地方でも広く使われている