「リョウメンスクナ(両面宿儺)」は日本書紀にも登場
両面宿儺は古事記と並ぶ日本最古の歴史書「日本書紀 仁徳天皇65年の条」も異形の怪物として登場し、悪行を尽くし大和朝廷に従わない逆賊として仁徳天皇の命令ものと、武振熊命(たけふるくまのみこと)により征伐されたと記述されています。
これは同じく異形の怪物として伝えられる土蜘蛛などと同様に、当時の大和政権に逆らう地方の豪族を征服したという事実が反映された物語と考えられます。
しかし、天皇に逆らう悪賊として位置づけられている両面宿儺ですが、前述のとおり飛騨地方では観音様とも同一視されるような異なった存在として伝承されています。
古代から征服する側とされる側との間に深い葛藤があり、両面宿儺もまた、その象徴のような存在とも考えられます。
現在でも両面宿儺像を祀る寺がある
続いて、長良川生まれの円空が飛騨を巡るベースキャンプとして滞在した袈裟山千光寺。
— 和傘CASAと長良川おんぱく (@n_onpaku) November 12, 2017
1600年前両面宿儺によって創建。忘れられた地霊(ゲニウス・ロキ)を訪ねる、円空の背中を追う旅
長良川おんぱく『両面宿儺に誘われて、飛騨の夜刀神を目指す。二つの地霊に出会う旅 飛騨美濃妖怪めぐり』 pic.twitter.com/gKR91ubaV5
岐阜県高山市の郊外の山中にある「袈裟山 千光寺」は、およそ1600年前に両面宿儺が毒龍を退治し開山した寺院と伝えられ、円空作の両面宿儺像が安置されています。
円空像は日本書紀の記述のような悪鬼としての存在ではなく、穏やかな表情で掘られている像からは、善悪両面あわせもつの両面宿儺の部分をより引き立たせたイメージが伝わる、飛騨の民衆の心に寄り添って創作した円空晩年の傑作とされています。
飛騨出身の円空は両面宿儺が悪の物ではない事を感じ取っていたのでしょう。
実際に「リョウメンスクナ(両面宿儺)」が引き起こしたとされる災害
2chに投稿された怖い話の中には実際に両面宿儺が引き起こしたとされる災害に関しても記述されています。
災害の内容は以下の通りです。
1914年:桜島の大噴火(負傷者 9600人)
1914年:秋田の大地震(死者 94人)
1914年:方城炭鉱の爆発(死者 687人)
1916年:函館の大火事
1917年:東日本の大水害(死者 1300人)
1917年:桐野炭鉱の爆発(死者 361人)
1922年:親不知のナダレで列車事故(死者 130人)
1923年:関東大震災(死者・行方不明14万2千人)
大正時代に発生したこれらの災害はいずれも両面宿儺が移動した地域です。
そして関東大震災の直前に物部天獄は自殺をしています。日本刀で喉を切って死んでいますが、その時に自らの血で「日本滅ブベシ」と遺書を残しました。自殺の地は関東大震災の震源近くの相模湾近辺であったとされています。
「リョウメンスクナ(両面宿儺)」とは?まとめ
日龍峯寺の両面宿儺像、なんと顔は前後に二つ、手も足も前後に二本づつという超人的な方なのです。元は飛騨の豪族で大和朝廷の平定の朝敵となり、そのあまりの強さからこのお姿が日本書紀で伝えられています。現存する像は少なく飛騨千光寺、善久寺、日龍峯寺に残っています。画像は撮影許可済みです。 pic.twitter.com/5AmolD2GJN
— まるきょう (@marukyo0418) November 19, 2017
両面宿儺には、現在では2chの怖い話やフリーゲーム怪異症候群などで呪術と恐怖の対象のようなイメージが定着してきているようにも思えます。
しかし、それらは日本書紀などに出てくる異形の姿からのイメージが先行した創作であると考えられます。
実際の両面宿儺は、古代の飛騨地方に実在した当時の大和朝廷に従わなかった民族の首領であったという説もあります。
住民を思いやる両面宿儺を象徴する逸話として、仁徳天皇の命令により討伐に来た武振熊命と戦うにあたり、別れを惜しんだ住民が宴でもてなしてくれたのですが、住民に罪が及ぶのを恐れて石の膳でもてなしを受けたという話が残されています。
そしてその石の膳は、現在でも飛騨高山から上高地に向かう途中の山中に建立された「晋門山 善久寺」で見ることができます。
謎の多い両面宿儺ですが、善とも悪とも捉えられる存在であることも人々の関心を惹きつけてやまない要素かもしれません。
DATSUさん
悪と善を二つの面として併せ持つ両面宿儺ですが、その人格を心理学ではペルソナと呼びます(日本語訳は仮面)。
まさに、悪と善の二つのペルソナを併せ持ち、時の権力者に従わなかったがために異形の怪物として歴史に刻まれてしまった悲劇の存在。それが両面宿儺の真実とも考えられますね…。
堕天使・リリス
ここまで読んでいただきありがとうございます。
両面宿儺を扱った小説や漫画、ゲームもあるので、その際にこの記事を思い出してくださいね。
リョウメンスクナ(両面宿儺)とは?
- リョウメンスクナ(両面宿儺)は、2chの怖い話などで知られている異形の怪物。
- 2chに登場する蠱毒の呪術で作られた両面宿儺の逸話は実在した話ではないと考えられる。
- 両面宿儺は日本書紀や岐阜地方の民間伝承にも登場する、飛騨・美濃地方の先住民の首領として実在したとも言われている。
- 両面宿儺は日本書紀では悪逆な怪物として描かれているが、地元の伝承では住民を思いやる善の存在として伝えられている。
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