邪悪の樹を意味する「クリフォト」とは?
クリフォトとは、邪悪の樹のことをいいます。カバラ神秘主義におけるセフィロト(生命の樹)とは対照的な存在であり、カバラ神秘主義において神の力とされるエインソフから、神の光がセフィロトに流れ込む段階で、その光の強さに耐えられず、破壊されたことにより生じたのがクリフォトです。イメージしにくいと思いますが、陰陽思想の陰と陽のような関係であると考えるとわかりやすいです。
また、セフィロトは10の光の球(セフィラー)から形成されるのに対し、クリフォトは10の外殻(クリファー)で形成されています。通常、クリフォトはセフィロトの下に鏡あわせのような状態で表されます。セフィロトではセフィラーが上位にいくほど高次の光を表すのに対し、クリフォトではクリファーが上位にいくほど深い虚無を表します。
邪悪の樹クリフォトを知るにはカバラ神秘主義や生命の樹セフィロトについても知る必要がありますので、カバラ神秘主義、セフィロトについてもご説明します。
生命の樹「セフィロト」の対極に位置する
セフィロト(生命の樹)とはカバラ神秘主義における世界の成り立ちです。無である「エイン」から無限の力「エインソフ」が生まれ、そこから生じた無限の光「エインソフオウル」が「セフィラー」という光の球に流れ込むことにより物質世界が形成されます。セフィロトとはセフィラーの複数形の言葉で、セフィラーが10個集まったものがセフィロトです。
セフィロトは10個のセフィラーで構成されていますが、「ダアト」というセフィラーも存在します。このダアトは生命の樹の中に位置づけられていない特別なセフィラーです。このダアトは隠された真意や知識という意味を持ち、10個のセフィラーの集合体ともいわれています。
クリフォトは、セフィロトの10番目のセフィラーである「マルクト」の下に対照的に伸びており、クリファーという10個の外殻から形成されています。セフィロトの10個のセフィラーに10人の大天使が象徴されるように、クリフォトの10個のクリファーに10人の悪魔が象徴されています。
カバラ神秘主義とは
カバラ神秘主義とはユダヤ教に基づいた神秘主義思想で、創造論、終末論、メシア論を伴い、ユダヤ教で口伝されてきた思想概念です。この概念がキリスト教に用いられるようになり、現在ではユダヤカバラとクリスチャンカバラの2つに分類されています。ユダヤカバラはユダヤ教徒が、旧約聖書を伝統的に解釈し律法を遵守するために使われたのに対し、クリスチャンカバラは生命の樹を活用した西洋魔術の礎とされました。
カバラでは、無限の光であるエインソフからの10段階の光の流出により世界が成り立っており、その流出の最終形が物質社会であり、その構造がセフィロト(生命の樹)で表されています。
クリフォトは10個の外殻で構成
セフィロトを形成する10個のセフィラーのように、クリフォトは10個のクリファーという外殻で形作られています。この10個のクリファーは「邪悪・虚無」を表す黒い球体です。各クリファーにはそれぞれ悪魔が象徴されており、球体の番号は「i」という虚数単位で表されます。10i~1iという虚数で表記されるクリファーの球体番号が小さいほど、その悪徳と虚無が深いとされています。
クリフォトを構成する外殻(クリファー)の悪魔が持つ意味
クリフォトを形作る外殻(クリファー)にはそれぞれ悪魔が対応しています。その悪魔は10の悪の属性を表しており、虚数の小さい上位の悪魔になるにしたがってその悪徳と虚無は深まっていきます。
下位のクリフォト
下位の悪魔とされるのはナマヘー(物質主義)、リリス(不安定)、アドラメレク(貪欲)です。「物質主義」は人の精神性を貶める悪徳であり、「不安定」は精神と物質というバランスを欠くことによる人間性の荒廃を導く悪徳であり、「貪欲」は自己中心的で欲深い悪徳です。
【下位のクリファーと悪魔】
虚数 | クリファー名 | 悪魔 | 悪徳 |
10i | キムラヌート | ナマへー | 物質主義 |
9i | アィーアツブス | リリス | 不安定 |
8i | ケムダー | アドラメレク | 貪欲 |
中位のクリフォト
中位の悪魔とされるのはバール(色欲)、ベルフェゴール(醜悪)、アスモデウス(残酷)です。「色欲」は性的倫理感の崩壊を招く悪徳であり、「醜悪」は人間としての道を踏み外す悪徳であり、「残酷」は慈悲や良心を失う悪徳です。
【中位のクリファーと悪魔】
虚数 | クリファー名 | 悪魔 | 悪徳 |
7i | ツァーカブ | バール | 色欲 |
6i | カイツール | ベルフェゴール | 醜悪 |
5i | アクゼリュス | アスモデウス | 残酷 |
上位の悪魔
上位の悪魔はアスタロト(無感動)、ルキフグス(拒絶)、ベルゼバブ(愚鈍)です。「無感動」は何に対しても心が動かされない「人間らしさ」を失う悪徳であり、「拒絶」は神や他者からの救済さえも拒否する悪徳であり、「愚鈍」は知性や良心といった理性をもった自我を失う悪徳です。
【上位のクリファーと悪魔】
虚数 | クリファー名 | 悪魔 | 悪徳 |
4i | アディシェス | アスタロト | 無感動 |
3i | シェリダー | ルキフグス | 拒絶 |
2i | エーイーリー | ベルゼバブ | 愚鈍 |
最上位の悪魔
最上位の悪魔としてのサタンが表す悪徳は「無神論」です。絶対的な唯一神を信じるユダヤ教やキリスト教では、神を否定することは最も深い悪徳となります。
【最上位のクリファーと悪魔】
虚数 | クリファー名 | 悪魔 | 悪徳 |
1i | バチカル | サタン | 無神論 |
クリフォトの世界にはいるとどうなるの?
クリフォトとは際限のない虚無の世界です。セフィロトが人間の精神性を向上させて神の叡智へ向かう道筋を示しているのに対し、クリフォトは倫理感や道徳感、良心といった人間の尊厳を破滅させ、堕落へと貶める道を表しています。
クリフォトの世界はセフィロトの世界よりも人間界に近い場所にあり、常に私たちを引きずり込もうとしてきます。ここではクリフォトの世界にはいってしまったらどうなるのかについて、ご紹介します。
生命エネルギーの流出がおこる
クリフォトの虚無の世界にはいってしまうと、私たちの生命エネルギーは際限なく流出してしまいます。倫理観や良心、道徳心といった人間の尊厳を失ってしまい、自己中心的な物質主義に陥ったり、猜疑心や不信感で孤立したりして、心身ともに蝕まれていきます。
このように生命エネルギーがクリフォトの虚無の世界に流れ出てしまうと、常に不安や疑い、焦りなど精神的不安定な状態になります。そして精神と体のバランスを崩して、心の病気になったり体を壊したりという結果を招くこともあります。
エナジーバンパイアになる
クリフォトの世界の影響で自分の生命エネルギーが枯渇してしまうと、他人の生命エネルギーを吸い取って生きる「エナジーバンパイア」になってしまう可能性があります。エナジーバンパイアは、「負のエネルギー」をぶつけることで他人の活力を奪っていきます。
愚痴や不平不満をぶつけて共感を得ようとしたり、自己中心的で周囲を振り回したりしている人はエナジーバンパイアです。
また、被害者意識が強かったり依存心が強かったりする人も他人のエネルギーを吸収しています。自分がこのようなエナジーバンパイアにならないようにするのはもちろん、近くにエナジーバンパイアだと感じる人がいる場合はすぐに距離を置くようにしたほうがいいでしょう。
クリフォトの世界に入るのを回避するためには?
悪徳、虚無、堕落など、私たち人間が陥りやすい負の概念から成り立つ世界それにクリフォトに対し、セフィロトは善徳・光・霊的成長といった、人間の精神性の向上や神性への回帰を求める世界です。この二つの世界は同時に存在しており、私たちはその二つの世界の間でバランスを取って生活しています。
ストレスやネガティブな情報で溢れかえっている現代社会では、クリフォトの世界に陥りやすい状況だといえるでしょう。私たちがクリフォトの世界にはいるのを回避するためには、常に自分の状態を確認しておくことが必要です。
もし心や体が疲れてネガティブに偏っていると感じた時は、自分なりのリフレッシュ方法で心を平安な状態に保つように心がけてください。心身のバランスをキープすることがクリフォトの世界に陥らないようにする最善の方法なのです。
クリフォトのまとめ
- クリフォトは邪悪の概念を持つセフィロトと表裏一体の世界
- クリフォトはセフィロトと同じように10の階層で構成されている
- クリフォトの世界にはいると生命エネルギーが枯渇する