秋波とは?
「秋波」の読み方は音読みで「しゅうは」で、元々は秋の穏やかで澄んだ波を表していました。そして、秋の波のようにすずしげな女性の目元を表現する言葉へと変わり、やがて女性の媚びを含んだ眼つきや、色目、長し目を指す言葉へと変化していきました。
チャーリー
アキのナミって、キレイなイメージがあるから、意外デース。
着物ちゃん
そうね。秋の波が女性の色気につながるなんて、意外な気がするわね。
「秋波を送る」の意味
現在では、「秋」や「波」という意味は完全に消えてしまいました。ですから、「秋波を送る」は、相手の関心を引こうとするために、媚びを売る、という意味になります。
本来は女性が男性にするもの、とされていましたが、今では男女関係なく使われています。また、個人同士だけでなく、団体同士の関係にも用いられるようになりました。「何か目的があって、相手の気を引こうと行動を起こすこと」全般を表すと考えてよいでしょう。
秋波の由来・語源
音読みであることからからも分かるように、「秋波を送る」の語源は、中国にあります。「秋波」の歴史は古く、1000年以上前の有名な歌人が詩の中に、「秋波」という言葉を使っています。この時点では、澄みきった美しい波、という意味で使われていました。
着物ちゃん
唐の時代に活躍した歌人、李白(りはく)が、
秋波落泗水(川に立つ波は低く広がり)・・・と歌っています。
その後女性のきりっとした目つきを表すようになり、媚びを含んだ目という意味に変わって、日本に伝わったようです。日本では、夏目漱石や太宰治など、明治時代の有名な小説家がこの言い回しを使ったため、広く知られるようになりました。
着物ちゃん
夏目漱石は、小説「野分(1907)」で、芸者がすれちがいざまに、男性に「秋波を送る」、と表現しました。その後も、評論家が「新劇は観客に秋波を送りすぎだ!」と書くなど、「秋波を送る」という言葉はどんどん広がっていきました。
また、石川啄木は「秋波」を「いろめ」と表現しましたよ。
チャーリー
人気作家が、次々に「秋波を送る」を使うようになったンデスね。
着物ちゃん
人気作家の言い回しを真似することが、当時の教養ある人たちのステイタスだったのかもしれないわね。
「秋波を送る」の使い方や用例
では、「秋風を送る」の具体的な使い方をみていきましょう。まずは、男女間で使われる場合です。
萌え袖ちゃん
若手社員さん、いつもお仕事テキパキこなしていて、すごいですね。
仕事ができる男って、ステキだなあ~
若手社員
えっ、そう?ありがとう、うれしいな。
萌え袖ちゃん
あなたのことが気になって、私仕事が手につかないんです。
課長さん
・・・萌え袖ちゃん、秋波を送るのはいいけど、仕事もちゃんとやってほしいな。
男女間以外の関係でも、使われています。むしろ、今ではビジネスや政治の場面で使われることが多いようです。
議員
世間で大人気の議員A氏の意見に、わが政党は心から賛同いたします。
課長さん
この人も秋波を送りはじめたなあ。A議員の人気にあやかろうとしているんだろうねえ。
ここでは恋愛の要素はまったくなく、「自分の利益のために、媚びを売る」という意味で「秋波を送る」が使われています。遠回しに相手の気を引こうとしている、ということですね。
流し目との違い
秋波を送る、と同じような意味で「流し目」があります。どちらも相手の関心を引こうと行動を起こす、という意味があります。
違いは、「流し目」の場合、顔は動かさずに目だけを動かす点です。顔を向けずに目だけでチラリと相手を見る、あるいは相手を見ながら視線だけをチラリとはずす、というしぐさが「流し目」です。流し目はどこを見ているか分かりにくいアンニュイなしぐさなのに対し、「秋波を送る」はさらにはっきりと相手に好意を表していると考えるとよいでしょう。