「あとぜき」の意味とは
「あとぜき」とは、「戸やドアなどを開けた後に必ず閉める」という意味です。
「あとぜき」は、奈良時代の頃から伝わる古語です。もともと「せき」は水をせき止める際などに使われていた言葉で、漢字で書くと「塞(せ)く」でしたが、やがて戸を閉めて空間を仕切る(塞ぐ)際にも「せき・せく」が使われるようになりました。
そこから、「戸を開けて入った後に塞く(閉める)動作」が「あとぜき(後塞)」といわれるようになったとされています。
「あとぜき」は熊本の方言
「あとぜき」は、県内のどこでも耳にしたり見かけたりする熊本弁の一つです。公共施設などの出入り口には「開放厳禁 あとぜき」といった張り紙があるくらいポピュラーですが、熊本県以外の地域ではほとんど通用しません。ただし「あとぜき」の「せき(塞く)」だけなら、(戸を)閉めるという意味の言葉として九州全域で通じるようです。
くまモンのステッカーや缶バッチなどのキャラクターグッズに熊本弁シリーズがあり、「あとぜき」の英訳「i'll close the door behind me」が書かれた商品も販売されています。
「あとぜき」に似ている方言
熊本県と隣接している鹿児島県でも「あとぜき」という方言が使われます。鹿児島県の場合「あとぜきがする(あとぜっがすっ)」と表現され、「後からその時のことを思い返してぞっとする」というような意味で使われています。
九州では同じ「せき・せく」を用いた言葉でも、九州全域で通用する「せく」や、熊本県限定「あとぜき」のほか、鹿児島県の「あとぜきがする」もあり、地域によって意味や使い方が異なるのです。
また、熊本には「あとぜき」のように「あと○○」という方言がいくつかあります。尻ぬぐいという意味の「後尻(あとじり)」、おさらいや後始末という意味の「後浚(あとざらい)」などです。熊本県人には、何かをした後はキチンとするものだという考え方があり、それが方言として伝わっているのかもしれません。
「あとぜき」の使い方の例
「あとぜき」は熊本では、日頃からよく使われている方言です。その一方、熊本県以外の人には、どのように使ったよいかわかりにくい言葉といえます。
どのような状況の時に「あとぜき」を使えばよいのか、例文とともに解説していきます。
「またやってる。こら、あとぜきせんか。」
課長
またやってる。こら、あとぜきせんか。
(またやってる。こら扉を開けて入ったら戸を閉めなさい。)
上京君
あっ、戸ば閉むるん忘れとった。すみまっせん。今閉むる。
(あっ、戸を閉めるのを忘れてました。すみません。今閉めます。)
これは、いつも戸を開けっ放しにしてしまう人に対して戸を閉めるように注意している例文です。言葉の雰囲気から目上の人が目下の人、例えば先生が生徒に、親が子供に注意しているシーンなどで使われます。
「熱風が入ってきて暑いけん、あとぜきしてよ。」
マイルド君
熱風が入ってきて暑いけん、あとぜきしてよ。
(熱風が入ってきて暑いから、ちゃんと戸を閉めてよ。)
スケ番
ごめんごめん。これから、気ば付くるばい。
(ごめんごめん。これから、気を付けるよ。)
次は、友達のように対等な立場の人同士で、注意をしている例文です。先ほどの例文よりも、少し砕けた表現になっているのが特徴です。
- 「あとぜき」の意味は「戸を開けたら閉める」
- 熊本の方言