「意趣返し」の意味や読み方とは?
「意趣返し(いしゅがえし)」の意味は、「ひどい目にあわせた相手に恨みを返すこと。仕返し。復讐」です。
広義では「仕返し」を表現する言葉の一つですが、「正面から相手に立ち向かい報復する」といった強い意志を表す言葉で、「意趣返し」は深い恨みや怒りの感情を持った場合に使われます。
「相手を皮肉る」言動を「意趣返し」と表現するなど誤用されることも多いようですが、皮肉のように「遠回しに当てこする」のではなく「正面から報復する」のが「意趣返し」です。
「意趣返し」の語源
中国で使われていた「意趣」という言葉が「意趣返し」の語源です。「意趣」は「理由、わけ、事情、意向、意地」といった意味を持つ言葉で、現在も日本では同じ意味で通用します。
たとえば、「意趣卓逸」は「考え方が優れていること」という意味の四字熟語ですが、ここでは「意趣」とは「考え方」つまり「意向」という意味で取り入れられています。このことからも、「意趣」とは本来「恨み」のニュアンスを持つ言葉ではなかったことがわかります。
しかし「意趣」は、中国から日本へ伝わって以降、「恨み」の意味に転じ、「意趣返し」は「ひどい目にあわされた相手に対して恨みを返すこと」を表す言葉となって現在に至ります。
「意趣返し」の使い方と用例
ここでは、「意趣返し」の使用例として例文を会話形式でご紹介していきます。
ニュースなどのメディアで使われる時の用例
お母さん
A国のB国に対する経済的制裁措置は、B国が主導したテロ行為への意趣返しと考えられます。
会社で使われる時の用例
番長
A子がパワハラを受けていたんだって? 部長の降格が決まったらしいよ。
スケ番
当然だよ! A子が部長のパワハラを告発したのは、意趣返しをするためだったのさ!
家庭で使われる時の用例
DATSUさん
ちょっとした浮気のつもりだったんだ。これからは家庭を一番に考えるから許して!
お母さん
許せません! 不倫相手にも意趣返しとして慰謝料を請求しますからね!!
「意趣返し」の類語
「意趣返し」に似た意味を持つ類語としては、以下の言葉が挙げられます。
- 意趣晴らし…仕返しをして恨みを晴らすこと。
- 仕返し………相手に同じようなことをやり返すこと。
- 報復…………相手側に相応の仕返しをすること。
- 復讐…………恨みを晴らすために同じようなひどい目にあわせること。仇を返すこと。
- 雪辱…………辱めを受けた相手を見返すこと。勝負に敗れて受けた恥をそそぐこと。
「意趣返し」と「仕返し」の違いは?
「意趣返し」とは、国家や会社同士のトラブル、大人同士の確執などで深い恨みを持つ相手に正面から報復する際に使われる言葉で、場合によっては大問題としてメディアに取り上げられることもあります。
しかし「仕返し」と言う言葉は、相手に対して深い恨みはなく、単に「やられたからやり返す」といったニュアンスで使われます。「意趣返し」も「仕返し」の一つですが、子ども同士の喧嘩の仕返しに「意趣返し」という言葉は使用しません。子どもの喧嘩やいたずらでは相手に対して深い恨みや確執があることはまれで、小さな問題にしかならないからです。
このように、相手に対し深い恨みが根底にあるか、相手に正面から報復するような大きな問題なのかによって「意趣返し」と「仕返し」の使い分けは判断できます。
「意趣返し」は相手への深い恨みが込められた言葉
「意趣返し」は、長年の確執やトラブルからの深い恨みがあることが前提となった「仕返し」を表現する言葉です。
相手への単なる皮肉を「意趣返し」と言うのは誤りで、子ども同士の喧嘩の仕返しの際にも使いません。企業間、国家間などの軋轢や確執からの報復、大人同士のドロドロした恨みを伴う復讐などを表現する言葉であることを覚えておきましょう。
「意趣返し」の意味まとめ
- 「意趣返し」の意味は、「ひどい目にあった恨みを晴らすこと」「仕返しをして思い知らせること」「復讐」
- 「相手に皮肉を言う」ことを「意趣返し」と表現するのは誤用なので注意が必要
- 「意趣返し」の類語は、「意趣晴らし」「仕返し」「報復」「復讐」「雪辱」
- 「意趣返し」は相手への深い恨みがある場合に用いる言葉で、国や企業間、大人同士の確執を表現するときなどに使用されている