「こけし」とは?
こけしは東北地方に古くからある伝統的な民芸品の人形で、木を用いてろくろ挽きで作られたものです。ボール状の頭に細長い胴体の外見で女の子を模しているのが大きな特徴で、宮城県の鳴子温泉など東北地方各地にある温泉地で売られています。このため東北旅行のお土産品で定番として有名です。
しかしこれだけ有名なこけしですが、名前の由来や歴史などは意外と知られていません。そこで今回はこけしにまつわる名前の由来や歴史などについて見ていきます。
「こけし」の由来や意味
こけしが誕生したのは江戸時代後期(19世紀前半)で、東北地方各地の温泉地で利用客向けのお土産として販売されるようになったのが由来です。当時温泉地の利用客で多くを占めていたのが農民ですが、収穫の時期が終わってひと段落した冬から春や、田植えが終わった時期などに温泉でのんびり過ごす習慣がありました。
温泉を楽しんだ農民が家路につく際に、農作業に向けた心身回復や五穀豊穣の願いを込めた縁起物として多くの方がこけしを買い求めました。さらに縁起物以外の使い道でも、よく知られているような子供用のおもちゃとしても使われてきた歴史があります。
なおこけしが現在のように全国的に有名になったのは大正時代で、東京など大都市の収集家が広く集めるようになったのがきっかけでした。その後1960年だいや70年代の高度経済成長期や2010年代にもブームとなり国内・海外問わず多くの人々が愛好されてきています。
「こけし」の由来が「子消し」という説は本当?
こけしの名前の由来は今も謎に包まれていますが、中には「子消し」が語源という怖い説がネット上で伝えられています。「子消し」由来説は1965年にある詩人が発表した童話作品の中で言われるようになりましたが、東北地方で貧困にあえいでいた農民が口減らしのために妊婦のおなかの中にいた子供を中絶したとするものです。そこで中絶した子供の霊を慰める目的でこけしが作られるようになったと説明されています。
しかしこの説は現在、ネット上で広く伝えられているものの、確たる証拠のない俗説や都市伝説とみなされているものです。このため「こけし=子消し」説はこけしの由来を説明するにはあまりにも無理があるとされています。
「こけし」に漢字はある?「こけし」の漢字表記とは
こけしは今でこそひらがなで書くのが一般的ですが、かつては漢字で書かれる例が多く見られました。ただしどちらかといえば当て字で決まっていたというものです。
具体的なものとして、まず国語辞典に載っているものとして「小芥子」があります。また戦前まで使われていたものとして「木形子」や「木牌子」、「木芥子」などがあり、いずれも「小さな木の人形」の意味で使われていました。
なお現在ひらがなで表記するのが一般的な理由として、1940年に東京こけし会の大会が宮城県の鳴子温泉で開かれた際に、ひらがなで表記することが決められたためでした。
「こけし」の種類や「こけし」で有名な地域は?
こけしの名産地といえば、宮城県の鳴子温泉をイメージする方は多いです。たしかに鳴子産のこけしは全国的にも知られているうえ、一般的なこけしのイメージといえば鳴子で作られた小さな木の人形にまつわるものが知られています。
しかし実際には、鳴子のほかにも東北各地にこけしの名産地が多いです。特に鳴子のほかにも同じ宮城県蔵王にある遠刈田(とおがった)温泉と福島県にある土湯温泉をまとめたのが「伝統こけし三大発祥地」とされています。
ほかにも三大発祥地の伝統こけしから発展したものもあり、こちらは山形県や岩手県、青森県など東北各地の温泉地で製作が盛んです。産地によってさまざまな違いがあるため、地域ごとの違いをじっくり見てみるのも1つの楽しみ方といえます。
近年では国内のみならず海外の女性観光客を中心にこけしがブームになっており、特に「こけ女(こけし女子)」と呼ばれる愛好家も増えてきている状況です。東北の温泉地に行ったときは、パートナーや大切なご友人へのプレゼントにこけしを買い求めてみてはいかがでしょうか?
こけしの由来と意味のまとめ
- こけしは東北地方の温泉地で生産されている伝統的な木製人形で、定番の土産物である。
- こけしの由来は江戸時代に温泉地を利用した農民向けに作られた土産物で、縁起物や子供向けのおもちゃとして多くの人々が買っていった。
- こけしの由来を「子消し」とする説もあるが、確たる根拠がないためにいわゆる俗説や都市伝説とみなされている。
- こけしの漢字表記には国語辞書に載っているものとして「小芥子」があるが、戦前にはほかにも「木芥子」などもあった。
- こけしの名産地として、三大発祥地である鳴子や遠刈田、土湯の各温泉がある。他にも東北各地に多くの名産地があり、産地によって特徴が異なる。
東北地方に古くから伝わる民芸品「こけし」。