床屋のくるくる回る看板「サインポール」とは?
サインポールとは、床屋の前にある赤・白・青の三色がくるくる回る看板のことです。ご存知の通り、床屋(理髪店・理容店・散髪屋)であるという目印です。
またサインポールは日本だけでなく、世界共通の「ここは理髪店です」ということを意味する看板です。
サインポールのいろいろな呼び方
サインポールには、色々な呼び方があります。
こちらでは、英語でサインポールを何と言うのか、日本での他の呼び方についてご紹介します。
サインポールは英語でbarber's pole
一見英語のようですが、サインポールは和製英語です。
英語ではbarber's pole(バーバーズポール)または、barber pole(バーバーポール)と言います。
理髪師を英語で言うとbarberですが、由来は「ヒゲ」を意味する「barba(バルバ)」というラテン語から来ており、ヒゲを剃るという意味です。
ちなみに、ヒゲを剃ることができない美容師は「Cosmetologist」または「beauty artist」と英訳します。
サインポールの別名はアルヘイ棒
その他に「有平棒(あるへいぼう)」と呼ばれることもあります。「有平糖」という飴菓子に似ていることが由来です。
有平糖は、技巧を凝らした美しい細工と、軽い食感が特徴です。現在は茶道のお茶請けに出されることが多く、口の中でゆっくり溶かして楽しみます。
この有平糖の中に、色の違う飴をねじって作ったものがあり、それが有平棒の由来です。
サザエさんに登場したときの名前はネジリン棒
サインポールはサザエさんに登場したこともあり、アニメ内では「ネジリン棒」と呼ばれていました。カツオが床屋に行くというストーリーです。
2013年9月に放送されたこの「まわれネジリン棒」の回は、日本のアニメ史上最後のセルアニメとして、歴史に残る回なのです。
当時サザエさん以外のアニメは全てデジタル化されており、サザエさんが最後のセルアニメでした。しかしこの「まわれネジリン棒」の回を最後に、サザエさんも他の長寿アニメ同様、デジタル化されました。
サインポールの色の意味と由来
サインポールに、なぜ「赤・青・白」の三色が使われているかについては諸説あり、どれもが病院や治療、人体に関係しています。
それでは、どのような説があるのか、こちらで詳しくご紹介します。
瀉血説
現在、最も有力なものは「瀉血(しゃけつ)説」です。
中世ヨーロッパでは、僧侶が修道院で外科手術を行っており、髭剃りで刃物の扱いに慣れている理髪師に助手を頼んでいました。
その後、ローマ法王により、教会内での流血禁止というお触れが出され、出血させる外科手術である瀉血の治療は、理髪師に託されるようになりました。
瀉血とは、当時のポピュラーな治療法のひとつです。これは、体の悪い部分に悪い血が集まっているという考えから、悪い部分の血を抜き取るという治療法です。
瀉血のやり方は、まず患者に棒を握らせて腕を固定し、腕を伝って血が受け皿に落ちるようにしておきます。そして意図的に出血させます。
患者に握らせる棒には血がつきますので、赤く塗って使用していました。これが三色のうちの赤の由来です。
そして治療後、棒と包帯を洗って店の軒先に干していたところ、風に吹かれて赤い棒に白い包帯がらせん状に巻き付きました。これが白の由来です。
その様子が、サインポールの「赤・白」になったと言われています。
また1700年代になると、理髪師と外科医をはっきりと区別する法令が出されます。
その際に「理髪師は赤・青・白、外科医は赤・白の看板」と決められたことにより、現在の三色の看板になった、というのが「瀉血説」です。
動脈(赤)・静脈(青)・包帯(白)説
「12世紀のヨーロッパでは、理容師が外科医同等の治療を行っていた。赤は動脈、青は静脈、白は包帯という意味で、サインポールはこの三色になった」という説があります。白は包帯ではなく、神経であると言われている場合もあります。
一見納得できる説ですが、実はこちらの説には大きな矛盾点があります。
血管に「動脈・動脈」があることが発見されたのは17世紀であり、12世紀に血管を赤と青で表示することは考えられないという指摘があったのです。
そのため、こちらの「動脈・静脈・包帯」説は、信ぴょう性に乏しいとされています。
血と包帯+星条旗の青説
サインポールの青色は、星条旗のカントン部分の色からきているという説があります。
中世のイギリスでサインポールが使われ始めた頃は、赤と白の2色でした。
「瀉血説」でご紹介したとおり、1700年代に理髪師と外科医を区別するために、「理髪師は赤・青・白の三色」とされましたが、定着しませんでした。
なお、イギリスのサインポールは現在も、赤と白の2色です。
野戦病院(フランス国旗)説
サインポールの三色は、フランス国旗からきているという説もあります。
フランス国旗のトリコロールカラーは、サインポールと同じ色です。
ナポレオン戦争最後の戦闘で有名な、1815年のワーテルローの戦い(英語読みではウォータールー)の際に、フランス国旗を旗棒に巻き付けたものを、野戦病院の前に建てました。
それがサインポールの由来である、という説です。
萌え袖ちゃん
サインポールの由来は、明文化されていないため、これだという決め手がありません。
有力とされている瀉血説も、元になったイギリスでは現在も2色です。
そのため、「この説は絶対正しい、この説は絶対違う」と言い切ることはできないのです。
そのぶん、色々調べて考察してみるのも面白いですね!
錯視を利用したサインポールの仕組み
サインポールを見ていると、線がいつまでも上へ登っていくように見える仕組みについて、ご説明します。
サインポールの中に、蛍光灯とモーターが入っており、明るくポールを照らしてぐるぐると回します。
Z巻に赤・青・白の縞模様が入ったポールが回転し、「錯視」によって脳が騙されている状態になり、模様が右に向かいながら上がっているように見えるのです。
なお、逆パターンのS巻きのサインポールもあります。
床屋のくるくるとは?サインポールの色の意味についてのまとめ
- 世界共通の理髪店の目印で英語では「barber's pole(バーバーズポール)」
- 由来で現在一番有力なのは「瀉血説」
- 「動脈・静脈・包帯説」は時代的に矛盾している
- 「アメリカ国旗説」「フランス国旗説」など国旗の色という説もある