ボブ
フロイト先生
アメリカンジョークは有名だが、君はロシアの風刺の効いたジョーク「アネクドート」を知っているかね?
「アネクドート」とは?
アネクドートは、ロシア語で小噺や逸話を意味していますが、その中でも主に風刺のきいた小噺やブラック・ジョークを指します。
英語のanecdote(アネクドート) は、逸話という意味で、あまり知られていない有名な人物の裏の顔を暴露するような話や隠れた話を指して呼びますので、ロシアのアネクドートとは多少意味が異なります。
ロシアのアネクドートは、ロシア(旧ソ連)を中心とした旧東側諸国で発達しました。主に題材は政治分野に関するものが多く、そうでない場合も多くは暗に政治体制や政治家を批判したり笑いものにしたりするような内容です。
単純な笑いをとるジョークというよりは、必ず「オチ」がありひとひねりあるような風刺のきいたジョークが特徴です。
アネクドートの種類
アネクドートは、対象とする分野がおおよそ決まっています。形式も大きく分けると3つのパターンがあります。
以下は、対象分野の一覧です。
- 政治・政治家
- 日常生活
- 犯罪
- エロチシズム
- 軍隊
- 医療
- ユダヤ人
また、形式の一覧です。
- 叙述型:順を追って、起こったことやエピソードを紹介する形式
- 対話型:政治家や有名人、おなじみのキャラクターが対話を行う形式
- Q&A型:質問と回答で成立する形式
フロイト先生
Q&A型は、ソ連時代に生まれたもので架空の放送局「アルメニア・ラジオ」(または亡命ロシア人の間では「ラジオ・エレバン」とも呼ばれる)に寄せられたリスナーからの質問に、放送局側がひとひねりある回答やナンセンスな回答をする設定なんだ。
有名な「アネクドート」を紹介
ロシアのアネクドートは、市民の政治に対する不満を小噺やジョークの形であらわしたものです。ここではそんな市民の思いが良く伝わる有名なアネクドートの内容を紹介します。
政治分野
この項では、政治体制や政治家にまつわるアネクドートを紹介します。
ソ連で最も偉大なマジシャン
A「ソ連で最も偉大なマジジャンは誰だと思う。」
B「それはフルシチョフだろう。中央アジアのカザフに種をまき、カナダのサスカチュワンで収穫したのだからな。」
フロイト先生
広大な土地があり多くの労働人口を抱え、労働者にとって最高の国であるはずのソ連が、あろうことか食糧危機に陥ってカナダから穀物を輸入せざるをえない状況になってしまったことを批判しているんだ。
社会主義という名の列車
「社会主義」という名の列車が走っていると、急に止まってしまいました。部下が見てみたところ、レールがありません。
スターリンは鉄道関係者を全員粛清してしまいました。
ブレジネフは窓のカーテンを全部閉めさせました。そして、車両をゆすらせ、列車が動いているように見せかけました。
ゴルバチョフはカーテンを全て開けさせます。そして、外に向かって「レールがない、レールがない」と大声で叫びました。
フロイト先生
列車が止まってしまった際の各政治家の架空のエピソードを元にしたアネクドートだ。
社会主義という列車が走るレールがもはやないこと、それに対して各政治家がとった行動が暗に政治体制への批判となっているんだ。
スターリンの場合は恐怖政治だったこと、ブレジネフは社会主義政治の行き詰まりをひた隠しにしたこと、ゴルバチョフは国外に向けて喧伝したことを示しているのさ。
経済はいつよくなる?
ドイツ首相(コール)「ドイツの経済はいつよくなるのでしょうか?」
神「君の任期中によくなる」
アメリカ大統領(クリントン)「アメリカの経済はいつよくなるのでしょうか?」
神「君の任期中には無理だろう」
ロシア大統領(エリツィン)「ロシアの経済はいつよくなるのでしょうか?」
神「私の任期中には無理だ」
よしこ
このころのロシア人は自国の経済状況に本当に絶望していて、他国をうらやましいと思っていたのね。
賢いのはどちら?
アルメニア・ラジオへの質問「ブレジネフとプーチンでは、どちらが賢いでしょうか?」
アルメニア・ラジオからの回答「ブレジネフです。演説の際も草稿を見て、頭がいいふりなどしませんでした。」
フロイト先生
現代のアネクドートの紹介だ。二人の政治家の特徴をとらえて、それに対する皮肉を言っているんだ。
やっぱりジョークといったらアメリカンジョークが一番ダネ