「人間万事塞翁が馬」ってどういう意味?
「人間万事塞翁が馬」は、中国の故事が由来となって出来たことわざです。「人間万事塞翁が馬」の読み方は「にんげんばんじさいおうがうま」、または「じんかんばんじさいおうがうま」となります。
「じんかん」とは、ずいぶん聞き慣れない読み方をするものだと感じる方もいらっしゃるかもしれません。「人間」と書いて「にんげん」と読むときは「人」のことを表わします。ですが、「じんかん」と読むときは「人」ではなく「世間」のことを意味します。
後ほど、詳しく紹介していきますが、今回の「人間万事塞翁が馬」場合の「人間」は、世間のことを指しています。そのため本来の読み方は「じんかん」となります。ですが、「じんかん」は、日本ではなじみがないため「にんげん」という読み方で定着しているのです。
続けて「人間万事塞翁が馬」の意味を解説します。「人間万事塞翁が馬」は、なんとなく難しい印象のことわざですよね。そこで、一つ一つ単語に分けてみていくことにしましょう。
・「人間」の意味:世間
・「万事」:あらゆる全てのこと
・「塞翁が馬」:国境付近の要害地に立てられた城塞や砦のほとりに住む老人の馬
一つ一つの単語の意味から、「人間万事塞翁が馬」とは、世間で起こる全ての出来事は、まるで国境付近に住んでいた老人とその馬に起こった出来事と同じように、良い出来事や悪い出来事は予測できないものだという意味になります。
世間で起こるあらゆる出来事の縮図がこの老人に起こった出来事であるという意味の「人間万事塞翁が馬」ですが、人によって解釈が異なります。なぜ、様々な解釈がされているのかというと、「人間万事塞翁が馬」の由来が、多くのことを考えさせる話となっているためです。
「人間万事塞翁が馬」の由来は?
「人間万事塞翁が馬」は、中国の「淮南子(えなんじ)」という古い書物の中の「人間訓」に書かれた話のひとつが基になった故事成語です。それでは、「人間万事塞翁が馬」の由来となる話をご覧ください。
昔、中国の国境近くの要害地に立てられた城塞に老人が住んでいました。ある日、その老人が飼っている馬が逃げてしまいます。近所の人達は、馬が逃げてしまったことを悪いこととらえ、気の毒がりますが、老人は「この出来事が良いことに繋がるかもしれない」と気にしません。
数ヶ月たった頃、老人の馬は足の速い良い馬を引き連れて戻ってきました。近所の人達は口々に「良かった」と喜びましたが、老人は「このことが悪いことに繋がるかもしれない」と言いました。
その後、老人の息子が馬から落ちて骨折するという出来事が起こりました。近所の人が心配していくと、今度は「この出来事が幸せな出来事に繋がるかもしれない」といいました。それから1年ほどが過ぎ、老人が住んでいる国境付近でも戦争が始まりました。多くの若者は出征して行きましたが、老人の息子は骨折していたため出征しませんでした。そのため、戦争で命を落とすこともありませんでした。
この話は、塞翁に起きた出来事としてまとめられていますが、起こる出来事は違えど、この社会で生きている私たち全ての人に当てはめることが出来るということを伝えています。そのため、各々の人が自分の生活やこれまで培ってきた思想を基に、この話の意味するところについて考えるので、様々な解釈がされるようになるというわけです。下記に様々な解釈のうち、代表的なものを紹介します。
・解釈①:何か良くないことがあっても悪いことが続くわけではなく、反対に嬉しい出来事が起こったときも、その出来事がいつまでも続くわけではない
・解釈②:人生において、どのようなことが起こるかは誰も察することが出来ない
・解釈③:良いこともそうでないことも様々な出来事がめまぐるしく起きるのだから、いちいち一喜一憂する必要はない
「人間万事塞翁が馬」の使い方は?
「人間万事塞翁が馬」の使い方と例文を紹介します。この言葉は自分だけでなく、周囲の人に対しても使うことが出来ることわざです。
・使い方①:失敗や過ちを起こさないように意識付けしたいするとき
良いことが続いて浮かれていると、足下をすくわれてしまうことがあります。そうならないために、気を引きしめ直す必要があるということを伝える言葉として使われます。
・例文:良いことが続いているからといって油断していてはダメですよ。人間万事塞翁が馬といいますからね
・使い方②:良くないことが続いているときのエールや慰めの言葉として
イヤなことや辛いことが続いている状態ののときに、励ましや力づけの言葉として用います。
・例文:人間万事塞翁が馬というくらいだから、いつまでもこの状態は続かないよ。
類語
続けて「人間万事塞翁が馬」と同じ意味合いのことわざを紹介します。
・類義語①:禍福は糾える縄の如し(かふくはあざなえるなわのごとし)
より合わされた縄のように、幸せを感じるような嬉しいことと、イヤだ辛いと感じられような出来事は、くるくると交代で起こるものだ。また、とらえ方次第では嬉しいことが辛いことに、良くないことが幸せなことに変わることもあるという意味
・類義語②:善の裏は悪(ぜんのうらはあく)
善と悪は表裏一体である。善いことがあれば、悪いこともあるという意味
・類義語③:沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり(しずむせあればうかぶせあり)
生きていれば、善くないことやイヤなことが起きるもの。けれども、それがずっと続くわけではないから、いちいち落ち込んでいても仕方が無いという意味
「人間万事塞翁が馬」って英語ではどう表現するの?
次に「人間万事塞翁が馬」の英語表現についてみていくことにしましょう。全く同じ意味で用いられている英文はないので、同じようなニュアンスで表現されている英文となります。
英語の例文
・英語の例文①:Whatever will be,will be.
意味は、「なるようになる」です。「Whatever」は「○○するものはなんでも」や「全部」といったニュアンスで使われる単語です。また、「will be」は「○○になる」という意味になります。
・英語の例文②:Every cloud has a silver lining.
直訳すると「どの雲にも銀の裏地が付いている」です。「Every」の意味は「どの○○も皆」や「全ての」で、「cloud」には「雲」や「曇り」を表わすときに使われる単語です。「silver lining.」には、良くないことや逆境などの辛いことが合った際の希望の光という意味合いがあります。そのため、「悪いと感じることにも良い面がある」といったニュアンスとなるのです。
人間万事塞翁が馬!悪いことが起きても次はきっと良いことがあるよ!
「人間万事塞翁が馬」は、とても奥が深く考えさせられることわざです。人は、嬉しいことが続けば調子に乗りやすく、悪いことがあると底なし沼にはまってしまったかのように、そこから抜け出せなくなってしまうことがあります。そのようなときには一喜一憂せず、しっかりと足下を見て行動するようにしましょう。
自分への励ましや戒めの言葉として、心に留め置くという人も多くいます。何か失敗してしまったり辛いことがあったときには、ぜひ「人間万事塞翁が馬」と思い出してください。次は、飛び跳ねたくなるくらい嬉しい出来事が起こるはずですよ。
人間万事塞翁が馬のまとめ
- 「人間万事塞翁が馬」とは、良い出来事や悪い出来事は予測できないものだという意味
- もともとは世間で起こる全ての出来事は、まるで国境付近に住んでいた老人とその馬に起こった出来事と同じようなことだという意味
- 「人間万事塞翁が馬」は中国の「淮南子」の中の話に由来している
- 「人間万事塞翁が馬」は、励ましや戒めの言葉として用いられる