若手社員
課長さん
「てにをは」は会話や文章のニュアンスを左右する助詞の総称です。
社会人であれば必ず知っておきたい知識なので、しっかりと覚えておきましょう。使えない人なんて言われないようにね。
「てにをは」とは?
「てにをは」とは日本語の品詞の一つである「助詞」の総称で、言葉のあとに付属して微妙な意味合いを表したり、ほかの語との関係性を表すものです。
日本語には「バラが咲く」の「が」、「食べるぞ」の「ぞ」、「君だけ歌え」の「だけ」など、「て、に、を、は」のほかにも、さまざまな助詞があります。
人は話をしているとき、相手に正しく意味を伝えていると思っていても、「てにをは」の一文字が違うだけで相手の理解が一変してしまうことがあります。
自分が伝えたい言葉が「てにをは」の使い方によって誤解を生じないように、意味や使い方をしっかり理解していきましょう。
「てにをは」の由来
「てにをは」は、漢文を読むときに漢字の四隅にふられたヲコト点に由来します。
「ヲコト点」とは漢文を読みやすくするために漢字の四隅・外側・中央に記した符号のことで、平安初期から室町時代頃に使われていました。このヲコト点の四隅にある訓点を、左下から時計回りに読んでいくと「て・に・を・は」となることから、助詞や助動詞などを「てにをは」と呼ぶようになったとされています。(下記ヲコト点の図を参照)
「望」という漢字の上部中央にヲコト点(青の●印)があれば「のぞむ(望む)」と読みます。
「てにをは」の使い方・用例
実際のところ、現代の日本人にとっても「てにをは」を正しく使うことは難しいと言われています。文章を書くときに、また話すときに「日本語を正しく、相手にわかりやすく使いたい」と考えている人も多いでしょう。ここからは「てにをは」の間違えやすい微妙な言い回しを例題を交えて説明していきます。
例題1 「で」と「を」を使い分ける
飛行機の中でCAに「肉になさいますか?魚になさいますか?」と尋ねられたとき、ほとんどの方が2通りの言い方で答えます。
1) 肉でお願いします。
2) 肉をお願いします。
このケースでは、1)の「肉でお願いします。」は丁寧な言葉使いに聞こえますが、場合によっては「肉でもいいよ」と若干投げやりな感じに聞こえてしまうこともあります。「肉で・・・」の言い方は相手にとって「もしかしたら魚が良かった?」と思わせてしまう言い回しとも言えます。
一方、2)の「肉を・・・」を使うと、「自分は肉が良い」という主張を相手に明確に伝えることができるので、相手は余計な気を回す必要がなくなります。
例題2 「~は」と「~が」を使い分ける
普段何気なく使っている言葉であっても「が」と「は」の使い分けは大変難しく、特に日本語を勉強している外国人にとって「が」と「は」は難関の一つといって良いでしょう。
華ちゃん
チューリップがきれいねー。
着物ちゃん
チューリップはきれいですね。
華ちゃんの「チューリップがきれい」は、ただチューリップという花がきれいだなぁ・・・という意味に聞こえますが、着物ちゃんの「チューリップはきれい」になると「他の花はそうでもないけど、チューリップはきれい」というイメージを相手に伝える可能性がでてきます。
とくに、相手や物などを褒めるときには「○○がステキだね」と端的に「が」を使う方が失礼にならず、意味が伝わりやすいでしょう。
正しい「てにをは」を学ぶためには?
正しい「てにをは」を使いたいと考えるあまり、かえって「これでいいのかな?」「合っているかな?」と不安感が増してしまう方もいるかもしれません。ここからは、正しい「てにをは」をマスターするための練習・攻略法を紹介していきます。
本を読もう
まず、最初におすすめしたいのは本を読むことです。通常、書籍は「校閲」「校正」などの工程を経て出版されます。当然、誤字・脱字だけでなく、文章が正しいか否かもチェックされています。つまり、販売されている本は基本的に「てにをは」が正しく使われている状態と考えれば、お手本にするには打ってつけです。
文章を確認してもらおう
メールやラインが普及している昨今、日々文章を書いている人は多いといえます。そこで自分が書いた文章(メール等)を身近な人に読んでもらい、「てにをは」がきちんと使われているか、おかしいところはないかなどの確認をお願いしてみましょう。思い描いたニュアンスがしっかり伝わっているかをチェックすることで、「てにをは」が使い分けられているかも確認できます。
近しい人では少し不安・・・という方は、思い切って会社の上司や学校の先生などにお願いするのはいかがでしょう。文章に対して経験豊富な人材に依頼するのは、一層の文章力アップに繋がります。
「てにをは」の英語表現
英語もそうですが、多くの外国語には助詞がありません。
例文
1)私はドアを閉めます
2)私がドアを閉めます
どちらも 「I close the door.」になります。主語の「I(わたし)」には、「わたしは」「わたしが」という助詞が含まれているので、さらに追加する必要がないのです。
英語で「てにをは」を表したい場合には、 particle (助詞・普遍化詞)が近い表現となります。
まとめ
日本語は外国語と違って「てにをは」を使うことで微妙なニュアンスを表すことができます。正しい「てにをは」の使い方をマスターして、美しい日本語で想いや考えを伝えられるようにしましょう。
江戸時代の国学者、本居宣長が1779年に著した『詞の玉緒(ことばのたまのお)』は、「てにをは」の意味・用法を解説した語学書として知られています。宣長の著作には『てにをは紐鏡(ひもかがみ)』という語学研究書もあります。日本語についてもっと深く知りたいと思ったら、宣長の日本語研究書を紐解いてみるとよいでしょう。
- 「てにをは」とは日本独特の微妙なニュアンスを表す助詞の総称
- 「てにをは」の由来は、漢文を読むときに漢字の四隅にふられたヲコト点
- 正しい「てにをは」の使い方の習得には、本を読んだり、文章を誰かに確認してもらうのが効果的
課長さん
「てにをは」が何を指しているのか、わかりましたか?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
先日、書類を提出した際に「てにをはの使い方がなっていない」とお叱りを受けたのですが、「てにをは」って何ですか?