相撲は日本の国技じゃない?
「相撲は国技じゃない」という見方は、相撲を日本の国技だと思っていた方にとっては驚きかも知れません。
実は、相撲を国技とする内容は日本の法律に明言されていないため、相撲は国技とは一概に言い切ることは難しいのです。相撲好きの人にとってはショックなことでもありますが、納得できる理由ももちろんあります。
それでは、日本で相撲は国技ではない理由について、国技の定義も併せてご紹介していきます。
相撲が日本の国技じゃない理由とは?
相撲が日本の国技じゃないという意見は、法律に明文化されていないことが理由です。しかし、相撲だけでなく、法律で定められていないにもかかわらず、国技として国民に認識されている武道があります。
例えば、柔道や剣道は宮内庁から天皇杯を下賜されています。天皇杯といえば、有名なサッカー部や東京六大学野球も国技天皇杯と関わりがあるため、サッカーや野球を国技と捉えている人もいます。
しかし、これらの競技が法律の中で国技と定められた表記はありません。ただし、相撲の場合は他の競技と違って「国技である」と言える根拠があります。それは相撲協会が改称したときのことです。当時の監督官庁である文部省に出した文書の中で、「この法人は我が国固有の国技である相撲道を研究し」と記載した内容があったのですが、その公文書は省令認可されました。
さらに、平成22年の裁判でも「相撲が国技」だと示されたことがあります。力士の解雇処分に対して、他の競技の選手に対するそれと比べて処分が重すぎるとの主張に、裁判長は判決で「国技たる相撲を他の競技と比べるのは正しくない」という理由で提訴を退けたのです。
他の武道とは相撲の異なる点は、公文書や裁判で国技と認められた事実があることです。これらのことから、法律では相撲が国技だと名言されていないものの、相撲を国技とする見方が一般的なものであることがわかります。
相撲が日本の国技と呼ばれた由来は?
相撲が日本の国技と呼ばれた由来は、明治42年に東京に初めて相撲常設館が造られたとき、その建造物を「国技館」と名付けた事実にあります。法律にかかわらず、日本人の精神に相撲が深く根付いていることを示す出来事ですね。実際に、国技館の開館式で作家の江見水陰氏が執筆した推薦文の中にも相撲は国技であるという言葉が記載されていました。
「国民に親しまれており、その国の文化において重要なもの」を国技の定義とするならば、確かに相撲は日本の国技じゃないとは言えません。相撲は日本人の心に根付く競技で、土俵に上がって競うことは神事であり、今でも多くの人たちが相撲に魅了されています。国技の定義によっては、相撲を日本の国技とする見方は至極当然です。
そもそも国技の定義ってなに?
そもそも国技の定義とは、その国を代表するスポーツや武術のことを指します。例えば、テコンドーと言えば韓国、カポエイラと言えばブラジルを連想しますよね。こういった国を代表する競技を法律で国技と定めた時、改めてその競技は国技であると断言できるのです。
しかし、「国民に深く親しまれており、その国の文化にとって大きな存在である」という国技の捉え方もあるため、国技は国民に深く支持されているスポーツでもなければいけません。
日本の相撲と同じく、法律上は国技じゃないのに国技として認められている競技もあります。例えば、アメリカ人にとっての野球や、カナダ人にとってのラクロスなどは、その国の法律に明文化されていないものの、国民からは国技として認識されています。
代表的な世界の国技一覧
ここからは、代表的な世界の国技一覧をご紹介します。
法令で国技と定められている競技
- 【アルゼンチン】パト
- 【ウルグアイ】destrezas criollas
- 【カナダ】アイスホッケー、ラクロス
- 【コロンビア】テホ
- 【スリランカ】バレーボール
- 【韓国】テコンドー
- 【チリ】ロデオ
- 【バハマ】セーリング
- 【バングラデシュ】カバディ
- 【プエルトリコ】パソフィノ
- 【ブラジル】カポエイラ
- 【メキシコ】チャレリア
法令で国技と定められていない競技
- 【アイスランド】グリマ
- 【アイルランド】ゲーリックフットボール
- 【アフガニスタン】ブズカシ
- 【アメリカ】野球、アメリカンフットボール、バスケットボール、アイスホッケー
- 【アンギラ】ヨットレース
- 【イタリア】サッカー、バレーボール、フォーミュラカー
- 【イングランド】クリケット、サッカー
- 【インド】フィールドホッケー、カバディ、クリケット
- 【インドネシア】バドミントン
- 【ウェールズ】ラグビー
- 【エチオピア】陸上競技
- 【オーストラリア】クリケット、オージーフットボール、ラグビーリーグ
- 【キューバ】野球
- 【台湾】野球
- 【中国】卓球、中国武術
- 【スウェーデン】テニス、ハンドボール、ラリー
- 【セルビア】水球
- 【タイ】ムエタイ、セパタクロー
- 【朝鮮】テコンドー
- 【日本】相撲、武道
- 【ポルトガル】サッカー
- 【フランス】フェンシング、ぺタンク、サバット
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相撲を日本の国技といっても間違いではない?
日本では法律に明文化されていないことから、相撲は国技じゃないということがわかりました。
しかしながら、相撲を日本の国技といっても間違いと断言することも難しいです。法律に定められていないものの、今でも多くの人を魅了してやまない歴史ある競技「相撲」は、国技だと言っても間違いではないのです。
日本の国技といえる競技
相撲が国技じゃないだけでなく、日本には法律で決められた国技がひとつもありません。しかし日本の国技ともいえる競技はいくつかあります。天皇杯を下賜されている柔道や剣道が、その最たる例です。
国技と呼べる武道には、他にも、大相撲、アマチュア相撲、柔道、剣道、弓道があります。大相撲の天皇賜杯は、昭和天皇がかなりの相撲好きだったことから、神事として行われていた相撲へと下賜されるようになりました。そのため、大相撲は最も歴史が古いのです。
相撲は国技ではない?日本の国技のまとめ
- 相撲は正式に法律で定められていないため、国技ではない。
- 法律では定められていないが、国の文化において重要なもので多くの人たちから指示されている競技のため、国技といっても間違いではない。
- 相撲が日本の国技と呼ばれた由来は、明治42年に造られた相撲常設館を国技館と名付けられたことが由来する。