リベラル派とは?
「リベラル派」という言葉をテレビや新聞などのニュースでよく聞きます。とはいえ、カタカナ語で書いてあるためか、いったいどのような人々なのかがよくわからない方も多いのではないでしょうか。今回は政治関係でよく聞くリベラル派について見ていきます。
リベラル派の由来
リベラル派の語源はラテン語で「自由な」を意味する「liber」です。そして英語形である「liberal」がそのままカタカナで音訳されて、「リベラル」となりました。このためリベラル派は直訳すれば「自由な人々」ということになりますが、政治的には「リベラリズム(自由主義)に立つ人々」、つまり個人の自由が活かされるような政治を目指す人々を意味するようになりました。
なお、リベラル派はキリスト教プロテスタントの世界でも使われており、「聖書の内容を現実に合わせて柔軟に解釈する人々」という意味です。
日本の政治でのリベラル派の意味
リベラル派は国内の政治ニュースでもよく聞かれる言葉ですが、日本の場合はどのような意味があるのでしょうか?実は、日本で言うリベラル派は「革新派」、つまり「伝統的な政治の枠組みをなるべく変えていこう」とする考え方を持つ人々のことです。
同時に、リベラル派は近年よく議論されている憲法関係で、戦争放棄を謳(うた)う9条改正に反対する「護憲」の立場に立っています。このような意味で日本のリベラル派は、どちらかといえば左翼に近い立場です。リベラル派は他にも、LGBTや障がい者などのマイノリティや社会的弱者に対する支援についても積極的な態度を示しています。
リベラル派とは左翼のこと?
リベラル派は左翼に近いということですが、リベラル派が左翼と同じかと言えば、そういうわけでもありません。左翼とは本来、労働者が革命によって権力を得て、誰にとっても平等な社会を作る考え方に立つ人々のことです。このため、リベラル派と日本の左翼が似通っている点として、政治の枠組みを変えていくという点があります。
一方で、リベラル派と左翼は政治を変えていく方法が相違点です。リベラル派の場合は「議会政治を通じて変革していく」方針に対し、左翼の場合は組織によって考え方は異なるものの、「革命によって社会を変えていく」という考え方があります。
リベラル派の中でも考え方に違いがある
リベラル派が基本的に左寄りで、政治を変えていこうとする考え方を持った人々であることは見てきました。しかし、実はリベラル派の中でも、かなり多様な考え方があります。例えば、リベラル派の中にも、ある政治課題に対して変えていくことに前向きな人もいれば、このままで良いと考える人もいます。
現実的な例を出せば、憲法改正に反対の立場をとる点は一緒でも、消費税の増税に賛成の人もいれば反対の人もいる状況です。また、天皇制についても、賛成し維持していくべきという人もいれば、君主制の存在を否定する意味で廃止すべきと考える人もいます。
政治的な課題は非常に多いため、基本的に政治改革に賛成であっても政治課題によって立場が異なってくることが、リベラル派が多様である原因です。
リベラル派と保守派の違いとは?
リベラル派と同じようにニュースでよく見聞きする言葉に保守派もあります。「リベラル派と保守派の違いとはなんですか?」という疑問にお答えするために、ここでは保守派について見ていきましょう。
そもそも保守派って何?
リベラル派と逆の立場である保守派とは、もともと「今まで行われてきた政治の枠組みを守りながら、社会的な問題に取り組む人々」を意味します。言い換えれば、政治の枠組みを変えることなく、現実にある問題に対処していく立場です。ちなみに、彼らの立場である保守主義を英語でコンサバティズムというところから、彼らもコンサバ派と言われることがあります。
同時に、保守派は憲法問題において、「9条改正によって自衛隊を他国の軍隊を同じようにすること」にも前向きな姿勢です。また、天皇制についても維持していくべきという立場に立っています。
もちろん、保守派もリベラル派と同じように様々な考え方の違いがあります。特に天皇制については、「何としても男性天皇の伝統を守るべき」という立場もあれば、「女性天皇も認めるべき」という立場の人もいる状況です。
リベラル派と保守派の傾向
リベラル派と保守派の傾向は、ざっくりと見ていくとリベラル派の方が政治の枠組みを変えることに前向きであるのに対し、保守派は変えることに後ろ向きで現状維持を重んじる立場です。ただ違いをより知るには、具体的な政治課題を取り上げて見ていくとさらに理解できます。
例えば、夫婦別姓制度(夫と妻とで別の姓を名乗ることを認める制度)の導入については、リベラル派が「女性の権利や立場を向上させられる」理由で賛成の立場であるのに対し、保守派は「家族の絆が崩れる」理由で反対の立場です。また、震災後に取り上げられるようになった原発問題についても、リベラル派は原発廃止や廃炉を主張するのに対し、保守派は原発再稼働に意欲的な立場をとっています。
リベラル派の日本の政党
それでは、リベラル派の立場に立つ日本の政党とはどこでしょうか?2019年5月現在、国会に議席を持っている政党は10ありますが、このうちリベラル派といえるのは「立憲民主党」や「国民民主党」、「社会民主党(社民党)」、「日本共産党」などです。これらの政党に共通するのは、憲法改正に後ろ向きで原発に反対、マイノリティ擁護に前向きな姿勢を示す点と言えます。
なお、保守派政党といえるのは、現在の政権与党である「自由民主党」や「日本維新の会」、「希望の党」が代表的です。特に「自由民主党」は、この一党だけで国会の議席の過半数を占めているため、日本の政治は全体的に保守の色合いが濃くなっています。
リベラル派の意味のまとめ
- リベラル派とは新しい枠組みの政治を目指す立場のことで、由来は英語のリベラリズム(自由)。日本では憲法改正反対など左寄りの立場に立つ人々のこと
- 政治を変える手法として、リベラル派は「議会政治での改革で行う方針」、左翼は「革命によって行う」方針
- 同じリベラル派でも、政治課題によって立場が異なると違う意見を持つ
- 保守派は政治の仕組みを維持して政治課題に取り組む立場。(例:憲法改正に積極的で、天皇制にも賛成)
- 現在リベラル派と言える政党は、「立憲民主党」「国民民主党」「社会民主党(社民党)」「日本共産党」