「蓋し名言」とは?
「蓋し」の読みかたは、「けだし」です。
分類としては「副詞」にあたり、後ろにある文章を強調したり修飾したりする際に用います。
実はこの言葉、1000年以上前から万葉集などで使われていた言葉で、日本に漢字を伝えたとされる中国でも使われています。
そして皆さんがなんとなく聞いたことがあるであろう言葉「蓋し名言」、これは「まさしく名言である」という意味になります。
しかし、この「蓋し」という言葉自体にはいくつか使い方があり、必ずしも「まさしく」を意味しているとは限りません。
それでは、その意味や使い方について詳しく見ていきましょう。
そもそも「蓋し」の意味は?
「蓋し」には、大きく分けて3つの意味があります。
- まさしく。たしかに。ほんとうに。
- (あとに推量や仮定の語を伴って)もしかすると。あるいは。ひょっとして。
- おおよそ。大略。
1つ目の「まさしく、ほんとうに」は「物事を確信をもって推定するさま」を表す際に使い、現代の日本で使われているものの多くは、こちらを意味しています。前述した「蓋し名言」もこの通りです。
2つ目の「もしかすると、ひょっとして」はあとに推量や仮定の意を表す語句と合わせて、1つ目よりも確信が弱い様子を表す際に使います。多くは万葉集などで用いられており、現在ではほとんど見かけません。
3つ目の「おおよそ」は漢文訓読文や和漢混淆文などに用いられており、こちらもほとんど使われていない意味となります。
「蓋し」の類語
「まさしく、ほんとうに」などの確信をもって推定する意味で用いたい場合、「蓋し」の類語は「大方」「確かに」「思うに」などになります。強い確信をもって「思うに◯◯◯だ」という形です。
「もしかすると、ひょっとして」と確信が弱いさまを表す場合の類語としては、「もしや」「恐らく」「たぶん」などがあります。
「おおよそ」の意味で使う場合は、「概して」「つまり」などと言い換えることができます。
「蓋し」の正しい使い方
「蓋し」の意味や類語について説明してきました。
では実際に日常生活で用いる場合には、どのような使い方があるのでしょうか。
例文を交えて、詳しく説明していきます。
「蓋し」を使った例文
「まさしく」の意味で使いたい場合の例文としては、「◯◯さんは蓋し素晴らしい人間だ」などがあります。この例文は、◯◯さんが素晴らしい人間だということを感じているのが自分だけで、周りに意見を主張したい場合には適切ではありません。
確信をもって自分は◯◯さんが素晴らしい人間であると強く思う、他人の目から見てもそうであろうと思える場合にのみ使います。
「もしかすると」と推量の意味を込めて用いたい場合は、「そんな不思議な出来事は、蓋し起こるまい」などとして使うことができます。確信が弱く、起こるとも起こらないともはっきりと断言できない様子を表しています。
また、「おおよそ」の意味で使う場合は、「彼が言っていたのは、蓋しこういうことだろう」というような使い方ができます。誰かが言っていたことを、要約し結論づけるようなかたちです。
しかし、この使い方は現代ではあまり見られないため、「蓋し」を「おおよそ」の意味で使う場合は少し注意が必要かもしれませんね。
「蓋し」の意味を正しく理解しよう
「蓋し」の読み方や意味、使い方について解説してきました。
実際には「蓋し」という漢字の読みづらさから、「けだし」とひらがなで表記される場合が多いようです。
また、細かな意味合いよりも、あとに続く言葉を修飾する役割として使われることがほとんどのため、「蓋し」という言葉自体の意味を理解していなくても、なんとなく意味は伝わります。
とはいえ、その意味や使い方をはっきりと説明できたら素敵ですよね。
「蓋し」の意味を正しく理解し、日常会話でスマートに使ってみましょう。
「蓋し」の意味と読み方のまとめ
- 「蓋し」の読み方は「けだし」、万葉集などで使われてきた日本古来の言い回し
- 「蓋し」には大きく分けて3つの意味があり、現代の日本では「まさしく」と強く推定する際に用いられる場合がほとんど
- 実際には漢字の読みづらさから「けだし」とひらがなで表記される場合が多い