茶道の読み方は「ちゃどう」「さどう」?
茶道の読み方は「ちゃどう」と「さどう」の2通りです。
「茶華道」という言葉は茶道と華道を合わせたもので、部活動の茶華道部に使われます。「ちゃかどう」「さかどう」どちらでも読めるため、学校によって「ちゃかどうぶ」「さかどうぶ」とまちまちの呼び方をしています。茶道に通じた人を表す「茶人」の読み方も「ちゃじん」「さじん」です。これらは、「母校の茶華道(ちゃかどう)部は茶道(さどう)の伝統があり、師範の資格をもつ茶人(ちゃじん)を輩出しています」のように使えます。
辞書に載っている茶道の読み方は?
茶道の読み方を辞書で調べると、『大辞泉』の茶道【さどう】の見出しには「1.ちゃどう(茶道)2.茶頭(さどう)に同じ」と載っています。「1.ちゃどう」は茶道【ちゃどう】を参照せよとの意味です。調べると、「茶の湯によって精神を修養し礼法を究める道」と茶道についての説明があります。以上から、茶道の読み方は「ちゃどう」であるが、同時に「さどう」の読み方も間違いではないことがわかります。『大辞林』『日本国語大辞典』『三省堂国語辞典』『新明解国語辞典』でも同様です。
例外は『角川国語辞典』で、【さどう】の見出しに「茶の湯」の説明を載せています。『岩波辞典』第6版の【さどう】は「茶の湯→ちゃどう」でしたが、第7版で【ちゃどう】を「茶の湯→さどう」と、つまり「さどう」が主、「ちゃどう」が副に逆転しました。言葉は世につれて変わるため、他社の表記も不動ではありませんが、現時点では「さどう」の読み方が一般的ということです。
「茶頭(さどう)」とは、安土桃山時代、茶の湯全般を武将らに指南した茶人を指します。織田信長、豊臣秀吉に仕えた千利休が有名です。茶会のとりしきりや茶道具の選定、管理を手がけました。
放送する場合の茶道の読み方は?
茶道の読み方について、テレビやラジオの放送できまりはあるのでしょうか。公共放送のNHKは「ちゃどう」「さどう」ともに正しい放送用語として用います。茶道の話題を取り上げる場合は「さどう」を選び、特定の流派について触れる場合は各流派の読み方に合わせます。このように配慮して使い分けていますが、「ちゃどう」の読み方になじみがない視聴者から「今の読み方は間違いでは」と指摘されることがあります。
茶道の読み方は時代によって異なる?
茶道の漢字、「茶」は「ちゃ」と「さ」の2つの音をもちます。「ちゃ」は平安時代に流入した音で、「さ」は鎌倉時代に禅僧が中国・宋から喫茶文化と共に伝えた唐音(とうおん)です。これらの音が「ちゃどう」「さどう」を形成します。喫茶文化は後に日本独自の芸術、茶道へと進化を遂げました。茶道の読み方はどのように変化したのでしょうか。
江戸時代までは「ちゃどう」が一般的
茶道は千利休の時代に完成しますが、呼び名は茶の湯で通っていました。茶の湯は「茶湯」と書いて、ちゃとう、さとうとも読みます。江戸時代の半ば、利休の教えを後世に伝えるため、流儀をまとめた茶書が印刷されました。この中で茶湯の道を表す「茶道」という言葉が生まれます。読み方を「さどう」とすると、茶事をつかさどる茶頭(さどう)と紛らわしくなるため、「ちゃどう」と呼ぶようになりました。
大名や富裕な町人に限らず、茶道は庶民にも浸透していきます。ある地域では、領主が茶道や華道、能、謡いの習い事を奨励し、領民も「茶華ぽん(鼓の音)」と近所で言い交わして稽古に励んだといいます。江戸時代には茶の湯を使う割合が高く、「茶道(ちゃどう)」は明治までほとんど出番がありませんでした。
現代は「さどう」が一般的
茶道具の美術品を収集する政財界人が、明治20年代から昭和15年まで近代数寄者となって茶道界を盛り立てました。裏千家は女学校の授業に茶道を導入して女性の茶人を開拓します。創元社からは初めての全集『茶道(ちゃどう)』が出版されました。第二次大戦後は家元制度が隆盛し、今日に至ります。
茶道の読み方は、江戸時代までの「ちゃどう」に代わり「さどう」が少しずつ一般化していきました。その理由は明らかではありません。
明治人は喫茶店を「きっちゃてん」と呼んでいましたが、モボ・モガで鳴らしたお洒落な大正世代はいつのまにか「きっさてん」と読み方を換えていました。「ちゃどう」から「さどう」に転換した理由についても、人々の言葉への嗜好が背景にあったとも考えられます。
流派によって「ちゃどう」と「さどう」が別れる?
「ちゃどう」と読むか、「さどう」と読むかは流派で異なります。代表格は三千家(さんせんけ)の表千家、裏千家、武者小路千家です。江戸時代、利休の奥義を共同で継承した三千家ですが、明治維新で茶道の存続が危うくなり、存亡を懸けてそれぞれの流儀を確立しました。そのため、作法や茶道具、茶道の読み方は三者三様です。
表千家は、茶道具も控えめで伝統的な茶風を守っています。茶道の読み方はどちらでもよいとしながら、「さどう」読みが多く見られます。ホームページに「Omotesenke Sado」と表記しています。
裏千家は進取の気性に富んだ家柄で、指南書や習い事を通して茶人の間口を広げ、茶道の華やかなイメージを担当します。読み方は「ちゃどう」を選び、家元の千宗室が出版した『裏千家茶道文化入門』の英訳本も「Urasenke Chado Textbook」です。
武者小路千家は無駄を排除した合理的な作法で知られます。茶道の読み方にはこだわりのない姿勢ですが、「茶の湯(Chanoyu)」の使用を原則とします。
裏千家による門人の拡充や影響力は三千家の中で抜きんでています。裏千家が主導する「ちゃどう」が主流とならなかったことに巡り合わせの妙があります。
萌え袖ちゃん
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結局「ちゃどう」と「さどう」どちらが正しいの?
茶道の読み方は、これまで見てきたとおり「ちゃどう」「さどう」どちらでも問題ありません。
『実用茶道用語辞典』では、茶の湯が起源であることから「ちゃどう」と読むのが妥当とする一方で、「さどう」とも読むと許容した表現をしています。『平凡社百科事典』は、「ちゃどう」と「さどう」の両方の読み方があり一定しない、と書いています。
昨今のように、テレビ放送で「ちゃどう」の読み方が推奨されても、視聴者に違和感がある限りは「さどう」がこのまま定着する可能性は高いといえます。
茶道の読み方のまとめ
- 茶道の読み方は「さどう」が一般的ですが、「ちゃどう」も正しい読み方です。
- 国語辞典や茶道用語辞典は「ちゃどう」を正称として載せ、「さどうとも読む」としています。
- テレビやラジオで茶道を一般的に取りあげる場合は「さどう」とし、流派の話題で扱う場合はその流派の読み方にならいます。
- 代表的な流派の三千家では、表千家は「さどう」、裏千家は「ちゃどう」、武者小路千家は「茶の湯」を原則的に使っています。
茶道の読み方は「ちゃどう」「さどう」?