「豚汁」と「味噌汁」の違いは何?
「豚汁」と「味噌汁」の二つの違いは、使われている具材と作り方にありました。
「豚汁」は豚バラ肉・ゴボウ・里芋・大根・にんじん・ネギ・こんにゃくなど盛りだくさんの具材をふんだんに使い、濃厚な甘みと香ばしいかおりが楽しめます。
一杯だけで満足度を得られ、食卓の主役になれる一品です。
「味噌汁」は、具材と味噌を使った汁物で、出汁の風味と味噌の優しい味わいが楽しめます。豚汁とは違い、見た目も味もシンプルでご飯のお供にぴったりの一品です。
どちらも味噌を使った料理ですが、具材と作り方の違いだけでここまで見た目も味も変わります。
では具体的に、具材と作り方にどのような違いがあるのか詳しく見てみましょう。
「豚汁」と「味噌汁」の具材の違い
「豚汁」の具材は、豚肉と豊富な野菜を使います。
一般的な具材として、豚バラ肉・ゴボウ・里芋・大根・にんじん・ネギ・こんにゃくを使います。
地域によっては、じゃがいも・さつまいも・レンコンなども入れています。
味噌汁とは違い根野菜を多く使用し、ゴボウなど風味の強い野菜を使うことも特徴的です。
そのため香りが良く食べ応えがあります。
「味噌汁」の具材は、野菜類・きのこ類・貝類・魚介類・豆腐・ワカメ・卵など、数多くの具材が使用されています。
具材にこれといった指定はありませんが、豚汁とは違い少量の具材を使用することが一般的です。
また地域によって味付けはさまざまで、東日本では主に赤味噌が使われており、西日本では赤味噌だけでなく白味噌も多く使われています。
「豚汁」と「味噌汁」の作り方の違い
「豚汁」と「味噌汁」の大きな違いは、具材を油で炒めるか、具材をそのまま使用するかの違いがあります。
「豚汁」の作り方は、具材を油で炒めてから鍋に入れ、味噌を溶かして調理します。
豚汁の最大の特徴は油で炒める点です。このひと手間を加えることで豚汁がより一層美味しくなります。
具材は熱を加えることによって旨味成分が表面に引き出されます。そして表面が油でコーティングされるため旨味を閉じ込めることができます。さらに油の香ばしさが具材に移り風味を際立たせます。
「味噌汁」の作り方は、昆布やかつおなどで出汁を取り、具材をそのまま鍋に入れ、味噌を溶かして調理します。
豚汁とは違って炒めないため、とても手軽に作ることができます。
「豚汁」は「味噌汁」の一種?
結論から言えば、豚汁は味噌汁の一種ではありますが、その成り立ちには大きな違いがあります。
室町時代では「味噌汁」のことを別名「おみお付け」と呼んでいました。
どちらも同じ味噌汁のことを指していますが、別名が名付けられたことには意味があります。
「味噌汁」は、具材の少ないシンプルな汁物という意味で使われていました。
一方「おみお付け」は、具沢山で豪華な汁物という意味で使われていたのです。
「おみお付け」は漢字で書くと「御御御付け」となります。この成り立ちの由来は諸説あります。
ある説では、汁物のことを「付け」と呼び、丁寧語の「御」を先頭に付け、さらに丁寧語にするため「御」を重ねたために「御御御付け」になったという説です。
またある説では、味噌を「おみ」と呼び、汁物を「お付け」と呼んでいたため、この二つの言葉をくっ付けて「御御御付け」となったという説です。
どちらの説にしても丁寧語の「御」を重ねて表現しており、身分の高い方に出される汁物には「味噌汁」ではなく、より丁寧な別名である「御御御付け」が使われていました。
このような歴史から、「御御御付け」は豪華で大切な味噌汁だと扱われていた事実が分かります。
現代でいえば豚汁こそが、別名の「御御御付け」と呼ぶにふさわしい一品だと言えます。
「豚汁」と「けんちん汁」の違いは?
「豚汁」と「けんちん汁」の違いは?
「豚汁」と「けんちん汁」の決定的な違いは、使っている具材と調味料にあります。
まず具材の違いですが、豚汁には豚肉を入れますが、けんちん汁には肉類を一切使いません。
それはなぜかというと、けんちん汁は仏道の修行僧が食べる精進料理だったからです。
けんちん汁は、鎌倉時代に建てられた建長寺(けんちょうじ)から広まったとされています。
元々は建長汁(けんちょう汁)と呼ばれていたものが訛り、けんちん汁になったといわれています。修行僧は肉類を一切食べませんので、けんちん汁といえば野菜のみを使った汁物のことを指します。
次に調味料の違いですが、豚汁は味付けに味噌を使っていますが、けんちん汁は味付けに醤油を使っています。
けんちん汁は醤油ベースのすまし汁の一種です。
作る工程は豚汁もけんちん汁も一緒ですが、醤油のキリっとした味付けがされるため、豚汁と全く違った味わいになります。
「豚汁」の豆知識!読み方は「ぶたじる」?「とんじる」?
「豚汁」の読み方ですが、「ぶたじる」「とんじる」どちらの読み方でも正解です。
しかし厳密に言えば、「ぶたじる」の方が日本語としては正しいとされています。
なぜなら「ぶた」+「じる」では訓読み+訓読みのため、日本語の文法としては合っています。
「とん」+「じる」の場合、音読み+訓読みの両方が使われているため、日本語として間違ってはいませんが、文法としては違和感がある読み方になります。
もし両方音読みにするなら「とん」+「じゅう」で「とんじゅう」と読むことになります。
しかし全国的なデータを見ると、「とんじる」と読む地域が圧倒的であり、全国の7割を超えています。残りの3割は「ぶたじる」と読み、北海道の一部と、福岡県・長崎県・佐賀県などの九州地方に偏っています。
ぜひ旅行に行った際には味噌汁ではなく豚汁を注文して、店員さんがどちらで発音するのか聞いてみるのも楽しいですね。
「豚汁」と「味噌汁」の違いのまとめ
- 「豚汁」とは、たくさんの根菜・野菜と豚バラ肉を油で炒め、味噌を溶かした汁物のことを指します。
- 「味噌汁」とは、少量の具材を炒めずにだし汁に入れ、味噌を溶かした汁物のことを指します。
- 室町時代では豪華な味噌汁を「御御御付け」と呼んでいまいた。現代における「御御御付け」は豚汁と言えます。
「豚汁」と「味噌汁」の違いは何?