「迎える」の意味とは?
まずは「迎える」の意味について、漢字の成り立ちも含めて説明していきます。
「迎える」の意味は次の通りです。
- やって来る人を待ち受ける。
- 家族や仲間の一員として受け入れる。
- 来てもらう。
- 呼び寄せて地位や役職につける。
- その時期になる。
- 他人の意向を受け入れる。
- 敵を待ち受けて戦う。
「迎」という漢字は形成文字(意味を表す文字と音を表す文字を組み合わせて作られた文字)です。
「迎」は、「辵(ちゃく):しんにょう」と「卬(ぎょう)」の組み合わせにより成立した文字で、道に出て「むかえる」という意味を示します。
- 辵:音を表す部分。立ち止まる足、十字路の象形。「行く」の意味。
- 卬:意味を表す部分。立つ人とひざまずく人が向き合っている象形。「ひざまずいて立つ人を仰ぎ見る」の意味。
つまり、「迎える」は、主体が受動的な状態でいることを表しているのです。
「向かえる」の意味とは?
次に、「向かえる」の意味について、漢字の成り立ちも含めて説明していきます。
「向かえる」という言葉は、「向かう」という動詞に可能を示す「れる・られる」が合わさった語なので、「向かうことができる(可能)」という意味になります。また、「向かう」という語は、「向き合う」が転じてできた語なので、「向き合うことができる(可能)」という意味にもなります。
「向かう」の意味は次の通りです。
- その方向に顔を向ける。
- ある方向を目指して進む。赴く。
- ある状態に近づく。
- はむかう。抵抗する。
「向」は、もともと家の明かりとりの窓を描いた文字で、「冂(けい)」は窓の形を、「口(くち)」は祝詞(のりと:神前で祈るときに神主が申し述べる言葉)を収める器の形を表しており、窓は神明を迎え、これを祀るところとされていました。「神明の光に正しく向き合う」ということから、方向に関する意味を持つようになりました。
つまり、「向かえる」は、主体が能動的な状態でいることを表しているのです。
「迎える」と「向かえる」の違いは視点や方向性?
「迎える」と「向かえる」の違いは、主体が受動的か能動的かという説明をしましたが、視点や方向性に違いがあるとも考えられます。
「迎える」とは、前方からやって来る物事に対して、じっと待っている状況です。矢印がこちらに近づいてくるイメージです。
「向かえる」とは、ある物事に対して、自発的に働きかけている状況です。矢印がこちらから出ているイメージです。
違いは類義語で考えるとわかりやすい
「迎える」と「向かえる」の違いは、類語で考えると分かりやすいので、いくつかご紹介します。
「迎える」は受動的な動作を表していますので、「待つ」「受ける」などの語に言い換えることができます。
(例)春を待つ。発表の日を待ち構える。新入生を受け入れる。問題を正面から受け止める。
「向かえる」は能動的な動作を表していますので、「行ける(「行く」の可能形)」「進める(「進む」の可能形)」などの語に言い換えることができます。
(例)僕は行けるよ。着実に歩を進める。
「迎える」と「向かえる」の違いを例文で紹介!
ここでは、「迎える」と「向かえる」の違いを例文でご紹介していきます。
以下の点に注意しながら見ていくと、漢字変換でのミスも減りますね。
- 「迎える」とは・・・主体が受動的。じっと待っている状況。「待つ」「受ける」などに言い換えることができる。
- 「向かえる」とは・・・主体が能動的。自発的に働きかける状況。「行ける(可能形)」「進める(可能形)」などに言い換えることができる。
「迎える」の例文
- 客を家に迎える。
- 転校生を温かく迎える。
- ○○日を迎える。(誕生日を迎える、記念日を迎える、など)
このほか、「迎」が含まれる熟語も同じような意味があります。
- 送迎・・・出かけたり帰ったりする人を、送ったり迎えたりすること。
- 歓迎・・・喜んで迎えること、受け入れること。
- 迎春・・・新春・新年を迎えること。
「向かえる」の例文
- 読書や勉強に向かえる静かな環境。
- 困難に立ち向かえる勇気が欲しい。
- (待ち合わせている人との会話で)15時頃、向かえると思います。
このほかにも、「向」が含まれる熟語で同じような意味を表す語があります。
- 志向・・・ある物事を目指して、心を向けること。
- 向上心・・・現状に満足しないで、もっと程度を高めようとする気持ち。
「迎えに行く」は正しいの?それとも間違い?
最後に、日常でよく使われる「迎えに行く」という言葉について説明していきます。
「迎えに行く」という言葉を使うときは、「相手が誰か」ということがポイントとなります。
「迎え」という語は、来る人を待ち受けること、待ち受けるための使者や乗り物のことを指します。つまり、「迎えに行く=来る人を待ち受けるために行く」という解釈になります。
この「来る人」が、自分の身内や同等の立場の人、目下にあたる立場の人であれば「迎えに行く」という表現で問題ないのですが、自分よりも目上の人にあたる立場の人の場合は、尊敬の意を込める必要があります。
よって、「お迎えに参ります」「お迎えに上がります」という表現になるのです。
- 友人や子どもの場合・・・「友人を駅に迎えに行く。」「子ども迎えに行く。」
- 会社の上司などの場合・・・「私の車で、○○様のお宅までお迎えに上がります。」
「迎える」と「向かえる」の意味の違いのまとめ
- 「迎える」は、前方からやって来る物事を待っている状況。矢印がこちらに近づいてくるイメージ。
- 「向かえる」は、「向かう」という動詞に可能を示す「れる・られる」が合わさった語。
- 「向かえる」は、ある物事に対し、自発的に働きかけている状況。矢印がこちらから出ているイメージ。