日本には首都がない?
日本の首都は東京でないことをご存じですか?
実は、東京は日本の首都でないだけでなく、日本には首都がありません。日本に首都がない理由は正式な遷都がされていないからです。
では、日本の首都を聞かれたらどこと答えるべきなのでしょうか。首都を定める法律や首都の歴史などを踏まえてご紹介していきます。
日本の首都を定める法律はない!
国家の組織及び作用を定める基本法を憲法と言います。
国の首都がどこであるかが法的に規定されるのであれば、憲法に明示されているのが道理です。しかし、憲法どころか議会で決める法律でさえ、日本の首都を定めていません。
日本と同じく、イギリスも首都を法律で定めていない国の一つです。
ただし、イギリス憲法は成文法と様々な慣習法の集合体としての不文憲法です。イギリスは慣習法や伝統を重視する国柄なので、わざわざ首都を宣言する必要がありません。あえて文章化しない文化の国なのです。
日本に首都がない理由は?
日本に首都がない理由には、天皇と遷都の歴史が深く関わっています。
かつては天皇の住居と首都は同じ場所にあり、天皇の転居と首都の移転はほぼイコールの関係にありました。奈良の平城京から京都の平安京へと、桓武天皇が遷都したケースは有名ですね。
それなら、現在の天皇がお住まいの東京こそが首都だと考える方も多いでしょう。しかし、実は東京に遷都する告知があったという事実はありません。
かつて天皇が住まわれていた京都御所は、明徳3年(1392年)から明治2年の東京御幸までの22代、現在天皇のいらっしゃる皇居はそれ以降5代の天皇の住居です。明治元年(幻の慶応4年)8月に京都御所で明治天皇が即位、9月に京都を出発、まもなく会津戦争が終結し、10月に到着した明治天皇は江戸城を皇居としました。
明治維新の混乱のさなかでのお引っ越しで、大日本帝国憲法制定時には既に天皇は皇居に落ち着いていたこともあり、正式に遷都を告知するタイミングを逃したように捉えられます。
遷都が告知されなかったため、今も日本の首都は京都にあるとする声や、皇居の場所にかかわらず、国の経済や司法の中心である東京が首都だとする声など、今では様々な主張が上がっています。
たしかに、日本では憲法において首都を定めていません。しかし、東京には象徴天皇の住む皇居があり、国会や官庁など統治機構も一極集中しているため、様々な主張の中でも「東京が日本の首都」とする声が一番大きいのも確かです。
「首都」はないが「首都圏」はある!
日本の法律では「首都はない」のが事実ですが、実は「首都圏」は法律で決められています。
「東京都の区域及び政令で定めるその周辺の地域を一体とした広域」(首都圏整備法第2条第1項)あるいは「埼玉県、東京都、神奈川県その他政令で定める県の区域を一体とした区域」(国土形成計画法第9条第1項第1号)との法律があります。
日本の首都を聞かれたらどこを答えるべき?
日本の首都がどこかと聞かれたら、事実上の首都である東京を、便宜上首都と呼称することに問題はありません。なぜなら、法律上で首都と定められていないだけだからです。
成文法として明示されていない以上、「東京は首都ではない」と言うことも間違いではありませんが、昭和54年6月5日の「参議院内閣委員会における内閣法制局長官答弁」において以下のような発言がありました。
「東京が日本の首都であるというそういう確信は、これは日本国民だれもが疑いなくそう信じていることであろうと存じます。」
明治の天皇御幸以来150年以上、国家元首の住居たる御所、国家の行政府、議会、最高裁判所、「帝都」と呼称されてきた戦前から、首都機能は東京にありました。東京が首都機能を持った日本の中心都市である以上、東京が首都なのは一般的な認識なのですね。
もし、あなたが外国人の友達に「日本の首都はどこ?」と聞かれたら、「法律では決まっていないけど東京だよ」と答えるのがベストです。
日本に首都がない理由のまとめ
- 日本の首都を定める法律・憲法はない!
- 維新の混乱の中、明治天皇が京都御所から旅立ち、皇居にお引っ越し
- 事実上の首都は東京!ただし京都が今も都、東京は法的に首都でないということも一つの真実