「悪魔の証明」の誤解しがちな解釈
「悪魔の証明」は「存在しないものを存在しないと証明すること」の難しさを指したものですが、「存在しないものを存在すると証明すること」の難しさであると誤って解釈されている場合があります。
再度、赤いカラスの例を使って違いをご説明します。
【誤った解釈の例】
A「赤いカラスがいることを証明してください。」
B「赤いカラスという奇妙な生き物がいるはずがないため、証明できません。それは悪魔の証明です!」
【正しい解釈の例】
A「赤いカラスがいないことを証明してください」
B「世界中を調べて『赤いカラスがいないこと』を証明するのは不可能です。それは悪魔の証明ですね。」
間違った解釈の例では、赤いカラスは「存在しない」という前提があり、存在しないものを探し出すことは不可能である、としています。
対して、正しい解釈の例では、赤いカラスを探し出すのは不可能であるとしていますが、赤いカラスの存在自体は否定していません。すなわち、赤いカラスは「存在するかどうか分からない」状態にあります。
「悪魔の証明」に反論する方法は?
「悪魔の証明」への反論方法について解説します。
これまで述べたように、「ないことの証明」は非常に難しいものですが、証明する方法が全くないわけではありません。
「背理法」という主に数学で利用される証明方法では、「存在すると仮定すると矛盾が引き出される場合、存在しないことの証明となる」とされており、悪魔の証明の反論に用いることができます。
DATSUさん
背理法で証明
背理法を使った「ないことの証明」の例を具体的にご説明します。以下は職場の同僚であるAさんとBさんの会話です。
A「ここにあった書類がなくなったのは、あなたが捨てからでしょう?」
B「いいえ!私は捨てていません!」
A「だったら『捨てていないこと』を証明してください。」
B「...。」
Bさんはやってないことを証明できずに困りますが、ある事実に気づき、次のように反論します。
B「書類はCさんの机の上にありますよ。私が捨てていたら書類自体がないはずです。」
A「本当ですね。あなたは捨てていなかったのですね。」
「Bさんが書類を捨てた」という仮定は、「書類がCさんの机の上にある」という事実と矛盾するため、Bさんは「書類を捨てていないこと」を証明することができました。悪魔の証明で言いがかりをつけてくる人に出会ったら、背理法の考え方を思い出してくださいね。
DATSUさん
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
哲学の記事は難しそうだけど、読んでみると結構面白いよ
悪魔の証明の意味についてのまとめ
- 悪魔の証明とは証明が非常に困難な事象に対する比喩で、多くの場合「ないこと(消極的事実)の証明」の難しさを指す
- 悪魔の証明は「存在しないものを存在すると証明すること」の難しさを示したものではない
- 背理法を使うと消極的事実を証明することが可能となり、悪魔の証明に反論に用いることができる
悪魔の証明を言ってくる人に効果的なのは、「背理法」を使うことだ。
~がないことは証明できないが、仮にそれがあるとしたらこんな矛盾が存在するんじゃないか、と論理的な矛盾を指摘するんだ。